_(消火後)

「新しい靴を買わねぇのか?」と尋ねるゲーラに、ななしは「まだいい」と答える。穴は開いていないものの、随分とボロボロだ。「ストックはあった方がいいだろう」というメイスに「そんなに不格好?」とななしは聞き返した。別に不格好ではない。新しい靴があった方がいい、とのアドバイスだけだ。
 ななしが靴を買い直すことをサボって数日。ふと、ゲーラとメイスは外出先であるものを見つけた。靴である。付き合いが長い分、ななしの足のサイズも形もわかる。「これにすっか」「どうせ買わんだろうしな」会話が一言二言で終わる。いざ購入に入ろうとしたとき、あることを思い出した。踵を返す。別の物を買うことにした。
「これって?」
「あー、腕輪だよ。腕輪」
「こう嵌めるんだ。楽だろう?」
「ゲーラもメイスも買ったんだ」
「あ? 当たり前だろ」
「デザインが揃っている分、ペアにもしやすいだろう?」
(三つあるときって、なんていうんだろう)
 少なくともpair”は二つが対や揃っているときにしか使わない。この場合だと、三人が同じものを身に付けていることになる。太い銀色のバングルだ。留め具はなく、軽く左右へ広げることができた。そこから嵌める。
「リオの分も買えばよかったのに」
「ばぁか。リオの分はまた別のだ」
「渡す意味が違ってくるからな」
「どういう意味?」
「どうってこともねぇ」
「気にするな」
(マッドバーニッシュっていうチームの、アクセサリーみたいなものかな)
 意味のわからないななしは、勝手に解釈した。


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