雨脚からの避難所(消火前・前日譚前)

 グルグルと音が鳴って、ざぁざぁと雨が降り続ける。その音で目が覚めた。世界大炎上におけるバーニッシュの火災を逃れたからか、洞窟の中はコケや羊歯がビッシリと生えていた。食べられそうなものは、ない。とりあえず焚き火をしていた場所に、もう一度火を灯す。日中の薄暗さが、気持ち明るくなった。皆思い思いに寛いでいる。(ゲーラとメイスの、姿がない)のろのろ起き上がって、入り口に見えた影に近付く。シルエットから予想通り、ゲーラとメイスだ。メイスの方が外に近くて、ゲーラが嫌がるように洞窟の内側にいる。天井から、ポツンと滴が垂れた。多分、地面を通って雨が流れている。もう少し歩くと、気付いた。ゲーラが振り向いて、メイスが遅れて見てくる。距離差もあるから、反応に差があるんだろう。足音を出した覚えは、ない。もう少し近付いて、外の様子を見る。土砂降りだ。
「これ、行けるかなぁ」
「絶対出たくねぇぞ。俺ぁ出たくねぇ」
「まぁ、火が出にくくなるからな。それがなくても、雨は体力を奪う。止むで待つ方がいいだろう」
「長く降ったら?」
「んなに続かねぇだろ。悪くて一日だ、一日」
 そう答えるゲーラと違って、メイスは考えてる。それもそうか、ここは洞窟だ。自然と、山とか地面の下とか、そういう意味合いになる。土砂崩れが起きたら大変だ。考えるポーズが解かれる。
「地形と最近の天気を考えるに、洪水や土砂災害が起こるとは考えにくいが」
(起きにくいんだ)
 この大陸の特徴はまだわからないから、そうなんだとしかいえない。とりあえず、心配はなさそうだ。ゲーラが、うんざりとした顔になる。
「そうなったら、先に逃げないといけねぇじゃねぇか。完璧、運頼りだな」
「それか見極めが必要になる。生き埋めは御免だからな」
「バーニッシュの炎で、一気に払い除けたらいいのに」
「馬ぁ鹿。それをできるのは、一握りだけだろ」
「無駄な体力は使いたくない。燃えたら燃えた分だけ、元気になるが腹も減るからな」
「動くからかなぁ」
「脂肪も燃やすからだろ」
「燃えてないバーニッシュもいたぞ。体質の問題なんじゃないのか」
「筋肉は付けてぇなぁ」
「それ、単純に栄養失調とか、その線じゃね? 出発は後に回すのか?」
「この感じじゃ、それしかねぇだろ」
「身動きも取りにくい。逆に隠れ蓑になってくれると有難いんだが」
「なるだろ。とりあえず、他の連中にも伝えてくぜ」
 ナチュラルにサングラスの人が入ってきてた。二人と会話を終えて、洞窟の奥に戻る。「食料とか探した方がいいかなぁ」「この雨の中でか?」「狩りをするにも、獲物が出てこないだろう」それはいえてる。じゃぁ、他には?
「茸とか木の実とか、食べられる植物を採取する?」
「おーい!! テメェら! 毒草と野草を見分けられるヤツはいねぇか!?」
 シン、と静まる。ゲーラが声を張って後ろへ叫ぶと、小さく反論が聞こえた。「野草なんて食ったら、腹ぁ壊しちまうだろ!」だろ、だろ、とエコーを続ける。なんかの効果だろうか?
「鑑定士は、不在のようだな」
「最初っから期待はしてねぇ。こうなったら、片っ端から食って」
「燃えるとお腹が空くんじゃ?」
「結果的に腹になにかは入れているからな。ギリ持つだろう」
「持たねぇよ。おい、ゲーラ、メイス。少し考えがあるんだが」
 そういって、またサングラスが入る。なんか、近場に思い当たるものがあるようだ。「そこに行けば、少しは凌げるかもしれねぇ」なんていっている。良い案だ。二人は少し、考慮の余地があるとでも言いたげだけど。
「もし外れたら、濡れ損じゃねぇか」
「体力の消耗を挽回できるほどの蓄えがあるなら、行く価値もあるかもしれんが」
「じゃぁ、私が一旦行く? それで様子見て、報告に帰ってくる」
「もう少し後に考えていいか?」
「気が早すぎるだろう」
 それぞれに反対された。私が行けば、早いのに。ゲーラほど雨には濡れないし。ボーっと外の様子を見たら、雨脚がどんどん強くなった。まだ結論は出ていない。もう少しだけ外を眺めた。


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