強制的に休ませる(消火前・村)

 長いこと時間を共にしてきた分、普段の様子から相手の調子がわかる。見るからにななしは具合が悪そうだった。例えボスが「大丈夫か?」と気にかけてもななしは「大丈夫」と返す。周りが気付いてなかろうと、ゲーラとメイスの二人はわかっていた。まだ活動を続けるななしの両肩を、両脇からガッシリと掴む。「えっ、え?」と混乱する本人を余所に、抵抗する暇も与えず腕を掴んだ。しっかりと抱える。ゲーラとメイスは既に背を向けており、ななしは強制的に後ろ歩きをさせられる。「えっ、えっ、え?」と未だに混乱し、左右を見渡す。首を横に振っても、連行する二人は振り向きもしない。周囲は黙って見守ることしかできない。就寝する場所に入る。誰もいない。ゲーラが先に足を止め、メイスが半歩前へ出る。引き摺ったななしを前に立たせると、目の前の広げた布の上に寝かせた。反射的にななしが尻もちを衝く。
「えっ、えぇえ」
「寝ろ」
「そんな状態でふら付かれたら、こっちが困る」
「まだふらついてないよ?」
「嘘つけ。めちゃくちゃふら付いてただろうが!」
「ボスも心配していたぞ? いいから、さっさと休め」
「まだ動けるって」
「なわけねぇだろ。無理して倒れちゃ困るんだよ」
「だったら、なんだ? またされたいのか?」
 その脅しにブンブンとななしは首を横に振る。まだそこまで体力は落ちてないし、弱ってもない。消費した体力を取り戻すかのように、燃える範囲を限定して身体から炎を出す。燃焼本能に従い炎を出したことで、自身の生命力を回復する──自転車操業だ。パッと頭を揺らす感覚もなくなる。「ほら」「ほら、ほらっ」と両手を広げて無事だと主張するななしに、はぁと二名は頭を抱えた。呆れるしかない。心配の種はそこではない。
「しゃーねぇ。わかりやすい選択肢を与えてやる」
「素直に休むか、俺たちに与えられるか。どっちか好きなものを選べ」
 いっておくが急ぎの用事はないぞ、とメイスが念押しする。休むなら休むで、それでいいんだぜ? とゲーラが逃げ道を残した。その提示された道に、ななしはコクコクと頷く。破れたクッションを枕にして、布の上に身体を預ける。メイスが自分の分をシーツ代わりにして、ななしに被せた。簡易的な布団である。
「まだいけるのに」
「ばァか。こっちが不安なんだよ」
「黙って寝てろ」
 こうも双方から責められては、言い返す間もなかった。


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