肉体的性差のすれ違い(生理痛)(消火後)

 のろのろと歩く。薬を飲んだのに生理痛が軽くならない。(なんで?)新たに効く薬を出してもらうよう、婦人科に行くべきか──? しかしながら、下腹の痛みは容赦なく前と後ろを襲う。「うぅ」とななしは呻く。ブランケットを探そうとしたら、ゲーラと鉢合った。ななしの様子を見て、眉を顰める。
「どこか具合でもわりぃのか?」
「うぅ。えっと、実は」
 痛みに泣きそうになりながら、ななしはどうにか説明をする。原因が生理にあることを聞いて、ゲーラの顔が青褪める。「あー、マジか」といいたげな顔である。「一応、温めりゃぁ楽になるんだよな?」と確認を取りながら、ななしの下腹に手を当てた。そのままである。コクンと頷いたななしも、これには疑問に思う。ジッと集中するゲーラの顔と手を、交互に見た。これを通りがかったメイスが見る。怪訝そうな顔でゲーラを見た。大抵、ななしから派生してゲーラに当たることが多い。原因へ直接聞いた。
「なにをやってるんだ」
「あん? 温めてんだよ」
「それでか?」
「おう。わりぃか」
「いや、悪いとかともかく、お前な」
 ゲーラは自覚がない。ななしも、どう反応をすればいいか分からず困っている。メイスは思い切って伝えた。
「俺たちはもう、バーニッシュじゃないんだぞ?」
「あっ」
 それでゲーラは自分がしていることに気付いた。──プロメアと共震した炎を手の平に集め、熱を上昇させる──自身の手の平をヒーターの代わりにしようとしたが、ただの人間にはできない。ゲーラの手が離れる。「わりぃ」と謝るゲーラに、ななしは首を横に振った。
「うぅん、大丈夫。少し楽になった」
「なら、いいけどよ。身体、冷やすなよ?」
「逆に着込んだら暑さで参る」
「だからこそのブランケットだろ。ったく」
 といいながら、メイスがななしにブランケットを渡す。用意がいい。これを有難く受け取り、ななしは下腹に巻き付けた。ゲーラは不服そうにメイスを見る。「準備満タンだな」と皮肉を投げかけたい口振りに「見ればわかる」と簡単に返した。それでも腰が冷えるとどうにもならない。ななしは痛みに耐えながら、ブランケットを腰に巻き付けた。
「まだ痛い」
「なんっつー巻き方をしてンだ。とりあえず、ベッド入って温かくしてろ」
「あとで身体が温まるヤツを入れてやるから、大人しく寝ておけ。立つとつらいだろ」
「確かに立つとつらいけど、でも病院とかの準備を」
「今か? ちゃんと症状を伝えられるのか?」
「んな状態で行かせられるかッ!! いいから、今は寝とけ!」
「えぇ、待っ」
 て、という間もなくパタンッと扉を閉められる。生理痛の痛みは、なにも下腹の痛みだけではない。同時に腹の具合も悪くする。ななしは青白い顔のまま、腹を押さえた。(トイレ行きたい)閉められた扉をもう一度開ける。気付いた二人に鬼のような顔で睨まれたが、正直にトイレへ行きたいことを告げると、すんなりと通してもらえた。
 鍵をかける。(こういうことが続くと、一式ある方がいいかも)ほんの少しだけ、引っ越しについて前向きに考えた。


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