ピアスの代用品(消火後直後)

 付け忘れてたピアスを付けようとしたら、なんか痛い。備品についていた鏡を見る。ちょっと見ると、ピアスの穴が赤く腫れていた。(バーニッシュの頃は、こういうことなかったのに)裏から突き刺してみても、途中で止まる。もしかして、内側から腫れているとか? 安全ピンで無理に抉じ開けようとしたら、驚いたゲーラに止められた。ガッと手首を捕まえられる。ゲーラはギョッとしていて、とても驚いたようだった。
「なにしてんだ、テメェ」
 こちらのやろうとしたことが、信じられなかったんだろうか? ちょっと、とだけで返そうとすると、メイスがやってくる。ゲーラと私の手に持つものを見て察したのか、さらに近付いた。髪を退けて、耳の様子を見てくる。
「あぁ。こりゃぁ、完全に腫れているな」
 といいながら、痛む部分をグッと押してくる。痛い。
「痛むか?」
「痛い」
「痛がってる顔だろ。そりゃぁ」
「だから患部を消毒して放置する必要がある、ってことだ」
 そう上手く纏めてくるけど、そうじゃない。「消毒液で事足りるか」というメイスに「足りるのかよ」とゲーラが返す。けどまだ私の手を離してくれない。離してくれる、わけじゃない。安全ピンを見てから、ジッとゲーラの手を見る。
「離してくれないの?」
「あ?」
「手が、ちょっと不自由」
「それ」
 ゲーラの視線が安全ピンに向かう。
「耳に刺したりしなけりゃぁな」
「今は消毒が優先だから、しないって」
「そういえば」
 消毒液を持ったメイスが戻ってくる。よく見れば、綿棒も持っていた。それも一本。そこの綿の部分に、消毒液を塗した。
「プロメアがいなくなってから暫くして、安全ピンを嵌めていたよな。お前」
「あー、あれは」
 ピタッと濡れたのが腫れた耳に当たる。消毒液が熱を吸って、ちょうどいい。ゲーラのムッとした視線が刺さった。
「ピアスが、プロメアと一緒になくなったから。だからそれで」
「ボスみたいに残らなかったってか?」
「そういうこと」
「まぁ、ボスの炎は特別だったからな。そういう違いはあるんだろう」
(共存と否定、の違いかな)
 そういえば、クレイ・フォーサイトの腕も関連がある。彼の腕はなくなっていた。ちょうど、バーニッシュの炎で義手を作っていたところらしい。メイスが反対側を撫でる。(これ、どのくらいで腫れが引くんだろう)ピアスの穴が塞がるから、早くしたい。
「で、代わりのヤツを買ったって腹か?」
「うん。その、復興作業中に出店とかがあって。そこで買った」
「一人で行ったのかよ?」
「ちょうど商店街みたいなところだったから。なにかの足しになるかと思って」
「それで気に入る物があれば、御の字なんだがな」
「無理に買ったんじゃねぇだろうな?」
「買ってないって」
 何気に失礼だ。私のセンスに、なにか文句があるんだろうか? 小振りのピンタイプを取り出した。(ぶっちゃけ、ゆらゆら揺れるのとか、もう少し大きいサイズが良かったけど)なにせ使える額に限りがある。妥協をしても、仕方がない。ジッと代用品のピアスを見る。これも思い出の一つになるから、買っても損をしないかもしれない。フッと、ゲーラが顔を覗き込んできた。
「今度、買ってきてやろうか?」
「え?」
「それか一緒に見てやった方がいいだろう。もう少し落ち着いたら、店でも覗いてみるか」
「うん、どういうこと? 一緒に買うってこと?」
「あのなぁ、お前の買い物に付き合うんだよ」
「バーニッシュの頃と違って、有象無象に物が並んでいるわけでもないしな。なに、店の見方ってのを教えるだけだ」
「ふぅん」
「気に入る物が見つかるまで、連れ回してやるよ」
 といいながら、耳を触ってくる。メイスのより、少し乱暴。耳の腫れをお構いなしに、大雑把に耳を触ってきた。包まれて、耳の硬いところを親指で揉んでくる。
「で、もう嵌めれるのか?」
「もう少し待て。今は消毒中だぞ」
 片付けるメイスが代わりに答えた。


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