夕食の準備(消火後)

「ラーメン食べたい」
 極東の島国発祥の食べ物だ。こんなにプロモーションで流れてくると、食べたくなってくる。そう感想を零したら、二人がビュッと出て行った。「ちょっと買い物行ってくる」「近場に美味いものがあったからな」と言い残して、出かけてしまった。流石『地獄のヘルキッチン』から徒歩数分の圏内にある物件だ。その分治安がちょっと悪いところだけど、そこはご愛敬。ゲームをしていたボスが「お前なぁ」と顔を上げた。
「そう座ってないで、少しはアイツらに感謝を見せろよ? あぁ見えて、一番気にかけているからな」
「そうなの? じゃぁ、ご飯の用意でもしておこうかな」
「それがいい。日頃の積み重ねっていうのは大切だからな」
 ボス、なんだか雷親父みたい。説教親父を指す言葉がそれ、って辞書で出ていた。あっ『雷』と出たからにはゲーラか。でも、ゲーラが雷親父みたいに説教するイメージがない。スマートフォンを取り出して、動画を見る。すごく昔の古いアニメを見たけど、やっぱり違う。『雷親父』を象徴するキャラクターから、すごく違った。見る角度を変えてみる。「なにやってるんだ、お前」とボスが呆れた。
「レシピを探しているのか? なら良いレシピがある。ガロから教えてもらったものなんだが」
「へぇ」
 またガロか、と思いながらボスの話を聞く。
「どうやら『チャーシュー』と『アジタマ』『ノリ』『メンマ』が一番合うのらしい! ネギやキャベツはお好みだな。『アジタマ』というのは卵を使ったもので、味の付いたゆで卵らしい」
「ふむふむ」
 クッションをふみふみしたくなった。
「ただ『ショーユ』という調味料と、その国で出来た酒を使わないと上手く行かないのらしい。ガロ曰く、失敗したと」
「へぇ」
「だから今、酒を調達しているのらしい」
「大変だ」
「同様に『メンマ』や『ノリ』も難しい。あぁ『ノリ』に関しては、僕たちには食べられないものだから食べるなと」
「へぇ」
「食べたら、すごく腹を下すらしい」
 ボスたち食べれないんだ。私は食べれたけど、遺伝子の違いというヤツかな。自分の髪を触る。別に、プロメポリスにいても違和感のある目で見られない色だ。
「だから、できるとしたら『チャーシュー』もしくはネギかキャベツだ。『チャーシュー』に関しては」
 スッとボスがスマートフォンを取り出す。なにかを探しているらしい。画面に表示されたものを目で追って、顔を顰めた。
「これも『ショーユ』がいる。できないな。代わりになるものは」
「ウィンナーでいいんじゃない? それなら冷蔵庫にあるよ」
「いいな! それ!! 確かに、その手の食べ方もできたはずだ! あとは、ネギかキャベツか」
「多分、細長いのならいけるはず。スーパーで見た」
「スキャリオンか。まぁ、確かにハーブ的な感じで入ってたりはするが」
「苦手だったり?」
「うっ」
 意外。ボスにも苦手なものとかあったんだ。「食べれるのは、食べられるぞ!? 僕は好き嫌いをしない主義だからな!」と腕を組んでプイッと顔を背けても、ほぼいってるのと同じだ。ボスはスキャリオンが苦手と。覚えた。「ならキャベツはどうなんだ」とボスがぶっきらぼうに聞いてくるから、思い出す。確か、冷蔵庫に使いさしがあったはずだ。確か、メイスがロールキャベツを作っていて。途中でゲーラがトマトで煮込んだはずだ。おかげでロールキャベツは真っ赤になった。その残りが多分、残ってるはずである。でも、もっと良いのがある。
「コーンとかは?」
「え?」
「ほら、冷凍の、バラバラの、コーンが。冷凍室にあるはずじゃん?」
「あぁ、あれか。確かにある。あれを乗せるのも有りなのか?」
「うん。レンジでチンして解凍すればいいし。もしくは具材を炒めるついでに熱を入れればいいし」
「へぇ。意外と使い勝手がいいんだな。解凍に時間がかかるかと思った」
「うん」
 使うとかなりお子様っぽくなるけど、それはいわないでおこう。「じゃぁ、キャベツとコーンとだけか」とボスがいうので「ウィンナーも」と付け足しておく。肉の存在は重要だ。それと有るのとないのとでは大きく違う。そんな風に話し合っていたら、二人が帰ってきた。ガチャンと音がしたことから、恐らく鍵もかけたんだろう。「買ってきたぜ」とゲーラが抱えていたものを見せた。
「なんか、多くない?」
「注文したら、カップ麺みたいな容器に入れられてよ。結構デカいサイズだったぜ」
「食べきれんようだったら、食べてやるよ。他にも色々と買ってきたからな」
「なるほど。既に調理済みと」
「へい。すぐに食べれまさぁ」
「しかも『中華ラーメン』とありましたから、中華料理の角に行きましてね。コイツに合いそうなものを買ってきましたよ」
「うん? 『中華』だと?」
「ボス。一応、奥深いんですよ」
「はぁ?」
「まっ、とりあえず今夜はラーメン三昧だ。ありがたく頂こうとしようぜ」
「これで食費の三日は吹き飛んだからな。残るは節約のみだ」
「なっ!? そんなにかかったのか!? 安売りのを狙えばよかったじゃないか!」
「けど! ボスには美味いモンを食ってほしくて!!」
「それと、この時間帯に値下げのものはありませんでした!」
「クソッ! そういうバグがあったか!!」
「でも、出来立てだし美味しいよ」
 結果的に、作らない方が良かったし。あとで作り置きのレシピを探して作ってみようかな。そう思いながら、シュウマイやエビチリのラインナップを見た。


<< top >>
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -