溶けたマシュマロ(ゲーラ)

 マシュマロで火傷することもあるのらしい。中がとろとろで、その分熱さを閉じ込めるとか。(それだったら、その前に溶けない?)いくら砂糖のシェルターでも、限界はあるはずだ。バターとチョコレートクリームを塗ったトーストの上に、マシュマロを敷き詰める。それからトースターにイン。焼き上がるまで、ソファで暇を潰すことにした。ゲーラが暇そうに、ピーナッツバターの論争を眺めている。
「なにか進展はあった?」
「うんにゃ、場外からマシュマロクリームの乱入があったくらいだ」
「ふぅん」
 そうなの。そもそも、マシュマロクリームって? ゲーラの見てるスマートフォンを覗き込む。けど、できない。角度の問題だ。これを察してか、ゲーラが見やすい位置にしてくれた。(『マシュマロクリーム』は、っと)件のクリームが出てきた場所を探すと、スッとゲーラの指が出てくる。画面を上へスクロールさせて、初めて出た場所を教えてくれた。どうやら、強いマシュマロクリームの信者らしい。勢いよく場に出てきた感じだ。
「マシュマロクリームって?」
「マシュマロの味がするクリーム」
「そのまんまじゃん」
 思わず口から出てしまった。チンとトースターが鳴る。「なんかできたな」とゲーラがソファに首を預けていう。「できたよ」とだけ返した。といっても、ゲーラの分はない。私のだけだ。マシュマロトーストを皿に置いて、ソファに戻る。私一人だけのオヤツだ。熱したマシュマロを食べる分には、これが一番手っ取り早い。
「俺の分はねぇのか」
「ないよ」
「冷てぇヤツ」
 ムッとゲーラが拗ねた。けど、お構いなしに食べる。うん、相変わらず甘い。手軽に甘さを摂取したいときにオススメだ。マシュマロを熱した方が美味い、というのも頷ける。もう一口食べる。もう一口、もう一口。その間、ずっとゲーラの拗ねた視線が突き刺さった。広げた膝に肘をついて、頬杖の体勢。ずーっと私をジト目で睨んでた。
「なに」
「頼みゃぁよかったぜ」
「自分で作ったら?」
 今度はムスッとしてくる。顔の角度が、さらに偏った。顎の端にあった手が、ギュッとゲーラの口を潰す。
「そうじゃねぇんだよなぁ」
「といわれても、いわれてないし」
「チッ」
 舌打ちされても。と、こうしてる間にトーストを食べ終えてしまった。残念。(そういえば)マシュマロクリームって、どういうものなんだろう。それがあれば、食べやすいとか? けど、パリッとした瞬間とあの形を保ってるのも、興味の一つではあるし。ゲーラのスマートフォンを見る。ゲーラがこっちを見た。
「おい」
 なに? とだけ視線をやる。
「ついてンぞ」
 トン、と口元を指すこともしないから、どこについてるのかがわからない。(マシュマロの残骸かな)溶けた糸を探すけど、思ったようにいかない。そもそもついてないのでは? と思ったら、グイッと顔を引っ張られた。聞き返す間もなく、ゲーラが近い。パクッと私の唇にくっついて、離れてから舌で唇を舐めてくる。それを数秒の間にしてから、元の体勢に戻った。頬杖はついていない。ソファの背凭れに肘をかけて、足を組んで座っていた。
「キス、しなくてもよかったのに」
 指で拭うだけでよかったのでは? と聞こうとしたら、見る見るうちにゲーラの顔が真っ赤になる。
「うっせぇ」
 まるで、熱せられた金属みたいだ。なんか昔、そういうのを見たことがある。と思いながら、頭から湯気を出すゲーラを眺めた。


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