間取り要望(消火直後)

「そういや、よ。暮らすとしたら、どんな部屋がいいんだ?」
 ある日突然、ゲーラが尋ねてきた。今日も疲れて休んでいるというのに。いったい、どうしたんだろう。明日も復興作業があるというのに。ゴロゴロと簡易ベッドで寛ぐ。唇が痛い。なんか、保湿とかをした方がいいのらしい。そうすれば、痛みが引く。
「お前はどうなんだ?」
 と、痺れを切らしたメイスが聞いてきた。二人して、地面になにかを描いている。ペッと靴を脱いで、もぞもぞと位置を変える。ベッドの足元へ腕を乗せて、二人の描く図面を見る。抉った土で、線がぼやけていた。
「なにそれ?」
「間取り図、って。知らねぇのか?」
「建物くらいなら」
「その、住まいバージョンだ」
 そういって、メイスが地面の四角形を指す。よく見たら、色々な四角形がくっ付いて一つの形になっていた。なんか、線と線に新たに線が引かれている。水平ではなく、それぞれ垂直だ。
「それ、なに?」
「窓と扉だ。ここがこうで、こう開く」
 なるほど。見方は合ってたのらしい。「建物の間取り図が読めるってのに、なんで読めねぇんだ」とゲーラが呆れたようにいってきたけど、確認は必要なのだ。ベッと舌だけを突き出す。「それで、要望って?」質問の意図を聞き返すと、二人がポカンとした。なんか、答えに迷っている。「部屋が広い方がいいの?」と指で描いてみようとしたら、手が届かない。ゲーラから枝を受け取り、ガリガリと四角形を描いてみた。ゲーラが納得をしかけている顔をして、メイスが考え込んでいる。
「ふぅん。中々良い趣味じゃねぇの」
「家賃が高そうだな。ただ、理想を詰めればこうなる」
「あー、リビングは広い方がいいもんな」
「日当たりは? 東向き?」
「いや、南だな。その分増す」
「立地条件が悪い分、家賃が下がるからな。この辺りが難しいぜ」
「さじあたり?」
「匙加減、だな」
「譲れねぇ一点に絞った方がいいな」
 そういって、ゲーラが枝を受け取る。ガリガリと、地面へ要点を書いた。色々と単語や修飾句とかが並んでいる。ちょっと読めないところがあるから、二人に聞いた方が早いと気付いた。
「これ、どういうこと?」
「あー」
「まぁ、こういう感じだな」
 とメイスが説明を始める。やっぱりわからないところがある。もう一度聞くことにした。


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