逃亡生活の食事
なんらかの手違いで、私たちの顔が割れてしまった。バーニッシュアーマーではなく、人間としての素顔だ。お陰でフードを深く被ってもすぐにバレてしまう。なので食料を買うために街へ入ることもできず、テロ活動のみ入ってすぐ逃亡、という繰り返ししかできない。
(元々、追い詰められていたところはあったけど)
あの隠れ里を除いて、殆どのバーニッシュが財団に捕らえられたのだ。私たちの仲間も、もう少ない。
「大半が捕らえられたって、ニュースで出たぜ」
と、遠くから街を偵察したゲーラがいう。どうやら大音量でそういったニュースを流しているのらしい。
「ついでにナールスーパーとやらでは激安セールがやってるんだとさ。チッ」
俺らをエンターテイメントの一つだと勘違いしやがって、とメイスが悔しがった。
そんな二人の情報を聞いてボスはどう動くかといえば、
「そうか」
と頷くだけだ。私も「そうなの」と頷くだけである。
──向こうが楽観視をしている。こちらを軽く見積もっている。
──しかし警察兼軍隊だとかいうわけのわからない集団の出撃により、我々マッドバーニッシュの仲間が捕らえられていることに間違いはない。
「私が、前衛を勤めた方がまだいいんじゃない? ソロでもなんとかなるし」
「ダメだ。お前は万が一に備えて後方にいろ」
「まぁ、殿は任せてくださいって感じですが」
あくまで彼らの注意を引いたりなんなりしても、結局逃げ延びているのはゲーラとメイス、ボスの三人だけである。他の仲間は、運よくといったところだ。
「何かしら対策を立てないと、ヤバいのでは?」
「わぁってるよ! お前にいわれなくたって、ボスはわぁってるはずでぇぃ!」
「ボスだけではない。俺たちだって考えている」
「そう? ならいいんだけど」
二人って、特に考えなしなところが出るし。そうボヤくと当の本人たちから「なんだとぉ!?」と叫ばれてしまった。
「事実じゃん」
「事実などではなぁい!! 俺たちは俺たちのやり方で動いてるだけでぇい!」
「そうだぞ! 少なくとも俺はちゃんと頭を使って動いているんだ!」
(少なくとも)
メイス、何気に俺は違うぞといっている……。
「そもそも、お前の合流がもうちっと早けりゃぁ……」
「もういい。これ以上終わったことを蒸し返すな」
ゲーラの愚痴をボスが止める。
「どちらかというと、慎重しすぎるところがありますからね」
「慎重しすぎることはない。寧ろ、そういうヤツが殿を務めた方が、生存率も上がるということだ」
「そうなんですかぃ」
「はぁ」
「逆にゲーラとメイスの二人が特攻した方が、敵の戦意も削げるというわけですね」
「そういうことだ」
「ヘヘッ、褒められると照れやすねぇ……」
(褒められたのか? 今の)
疑問に思うメイスの一方で、皮を剥き終える。これで後は煮るだけとなった。
「お湯、もうできてますか?」
「もう準備は万端だ」
そういって、目の前の大鍋を指差した。そこに食用できる部分を入れて、アク抜きをした。
グツグツと煮える。
「これ、火でアク取りできますかね」
「さぁ。やってみたらどうだ」
ボスの助言に従ってやってみたら、表面だけが焦げた。