目脂と睫毛

 寝起きの睫毛には目脂が付いていることが多い。執拗に瞬きをしているななしがそうだ。上の睫毛と下の睫毛が目脂でくっつき、目を開けることができない。軽く目尻を伸ばしてもそうだ。それを見たゲーラが、体を屈める。
「ちっと、ジィッとしていろ」
 いわれた通りに目を閉じる。寝起きのななしは頭を動かせない。ボーッと、ゲーラの行動を待つ。ななしの頬に手を当て、顔を上げさせる。抵抗しないことを見て、ななしの瞼に指を滑らせた。瞼の下に触れる睫毛の先を指に乗せ、軽く左右に揺らす。目脂はまだ取れない。(どうすっか)親指も起き上がらせ、上下にも揺らす。指の腹にヌメっとした感触が生じ、ななしの睫毛が抜けた。
(あっ、ヤッベ)
 しかし、見た目的にも変わらない。これをゲーラはセーフとした。指を離す。ななしがゆっくりと目を開けると、普段と変わらず瞬きができた。
「っし。これで大丈夫だろ」
 寝惚け眼のななしは声を出せない。「ありがとう」と伝える代わりに頷いた。ななしが重い目を擦って、バスルームに入る。これら一連の様子を見たメイスは、ポカンと口を開けていた。
(キスするんじゃなかったのか)
 朝の起きた時間であるから、誰もマトモに思考を回せない。ふあ、と浮かぶ欠伸だけが、宙に消えた。


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