寝かせる(メイス)

 とても疲れてとても眠い。けど、まだ仕事をできてない。近日中に出さなければいけないし、期日も迫ってる。目を擦る気力もなく、もう限界。寝たい。(でも、終わらせないと)資料を纏めて、情報を纏める。けれど、そんなに気力がない。うつらうつらと舟を漕ぐと、カサカサとピアスを触られる。当の仕事を終えた、メイスだ。私を抱きかかえて、黙って進捗を見ている。
「もうそろそろ、寝たらどうだ。そんな体調で、終わるわけがないだろ」
「うー」
「涎も出ている」
 そんな馬鹿な。と思ったら、口元を拭われる。グイッと。見たら、親指が濡れていた。
「寝てない」
「寝てただろ」
「うぅ」
 否定しても、眠いものは眠い。「寝てない」「寝てた」と事実を突き付けられただけ、疲れた体が沈む。脳の覚醒状態も、戻らない。カリカリと音がして、ピアスが削られる。耳に視線が刺さって、ピアスを裏返される。そんなに、ピアスは好きなの? だけど書類はまだ終わらない。
「ほら、寝るぞ。これ以上は無理だ」
「うぅ」
「明日に回せ。早く起きれば、どうにか取り戻せるだろう」
 間に合わなかったら、俺も手伝う。そういって、ヒョイと体が持ち上がった。私が、宙に浮く。そのまま部屋まで連れていかれて、ベッドに寝かされる。肩まで布団もかけられる。頭に手を置かれて、瞼を閉じさせてきた。
(まるで、死人を寝かせるみたい)
 実際『泥のように眠る』とか『死んだみたいに眠る』みたいになるんだろうけど。頭を撫でられる。ついでにピアスも触られる。スーッと息を吸い込むと、モゾリとした。入り込む。肘が背中に当たって、頭を撫でられる。薄く目を開けると、メイスがいた。距離は、これ以上近付く気配はない。
「するの?」
「流石に、な」
 せん、と否定を口にした。そっか、とだけ返す。目もシバシバするし、とても眠い。ふぁ、とだけ息をしてから、枕に顔を埋めた。頭を撫でられる。耳も触られる。なぜか、ピアスだけを執拗に触られた。カサカサ、カチカチ音が鳴る。まぁ、されないならいいや。いつものルーチンみたいにしてたし。寝心地を直す。今度は頭を抱かれて、いい子いい子をされた。まぁ、いいや。好きにして。メイスの好きにさせて、私は寝た。


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