町制作手続き中のテレビ放送(???バース)

 カリカリと手書きで申請書に文字を書きこむ。新しく町を作るとしても、大変だ。まず行政に許可を取らなければならないし、他の手続きも面倒だ。(はぐれ者の町といっても)スラムになったらお終いだ。だから、最低限の法手続きもする。けど、そのためにも各州の法律を読み込む必要がある。取り寄せた法律の全書を取り寄せる。分厚い。重いし、裏の透ける薄っぺらい紙が何千ページもある。これを読み込むには大変だ。(まぁ、やるけど)パラパラとページを捲って、間に合わせの回線でネットを検索する。前例も頭に入れたいのだ。それも頭に入れて、一休憩。ゲーラとメイスの方を見れば、大変そうだった。──ゲーラはガシガシと頭を掻いて書面を作っているし、メイスは煩雑な事務仕事に追われている。どちらとも、疲れてる感じがとてもすごい。ゲーラもメイスも、顔が険しい──。私はといえば、町のルールを作るために州法とか国の法律を全部頭に入れてるところだけど。
 席を立つ。カフェイン、の方がいいかな。ココアとか甘い方だと、眠たくなるし。覚醒効果のある方がいい。と決めてインスタントの珈琲を淹れる。お湯を沸かして、珈琲の粉末をカップに入れる。こっちの方が安上がりなのだ。私は、ドリップ式で淹れる方が好きだけど。けど、割高だ。今は諦めるしかない。沸いたお湯をカップに注いで、マドラーでクルクルと掻き回す。粉末とお湯。この二つしか使わないから、とても安上がりだ。砂糖の瓶を置く。それらをトレイに乗せて戻ると、テレビが入っていた。
 画面に、リオとガロがいる。
『おめでとうございます! 地球を救った英雄が二人、コラボレーションをしたようですね!?』
『いや、ハハッ』
『なんつーか、すげぇ偶然だったよな!? まさか、リオと一緒に訪れたランドで、こんなコラボを持ちかけられるとは思わなかったぜ。リオも気に入ってた分、良かっムグ!?』
『黙れ! まだ夢見心地な気分だが、とても嬉しいと思う』
『相変わらずの仲の良さですね! 以上、現場でした!!』
 どうやら、インタビューだったようだ。すぐにそのランドと思われるコマーシャルが入る。「リオ、元気そうだね」と告げながらカップを置く。相変わらず、インスタントの香りだ。砂糖のスティックを切ったら、二人が震えていることに気付いた。
 ゲーラはカランとペンを落として震えているし、メイスも顔を強張らせている。二人とも、ひどいショックを受けたようだ。「ねぇ」とテレビを指差せば、ガタンと二人が同時に立ち上がった。
「ずっ、りぃいぞ!? ガロ・ティモス!! 俺だって、ボスと一緒に遊びてぇのに!」
「そもそも! ボスはそのようなものだと聞いた覚えがない!! お前の目は節穴なのか!? ガロ・ティモス!!」
「すごい怒りよう」
「そもそも、俺たちはこんなに頑張ってるんだぜ!? 少しくらい、ご褒美ってぇモンがあっても、いいじゃねぇか!」
「娯楽もクソもねぇ僻地だ! どうやって発展するまでの暇を潰せってんだ!?」
「それは、どうしようもないというか。それ込みで始めたんじゃないの?」
「けどよぉ!!」
「俺だって遊びたいんだ!」
 すごい。我慢の爆発だ。ゲーラはピンで前髪を上げてるし、メイスも髪を纏めている。こう考えると、すごい修羅場だったんだな。二人とも。ポリポリと頬を掻く。「じゃぁ、全部投げ出して、遊びに行っちゃう?」と提案すれば「ダメだ!」と叫ばれた。
「間に合わねぇだろ!? クソッ、あー。どうして提出期限なんてモンがあんだ!?」
「まだ、まだ終わらない更新作業がある。あと住人登録。それと」
「ハイウェイにできる町も、大変だったんだね」
「ありゃ、公共事業でできたモンだ!」
「実際、無許可で集団生活を築く連中もいるがな! 大抵お縄になってそれで終わる!!」
「そっか、大変だね。犯罪者に見られちゃうか」
「おう。終わったあとで犯人扱いじゃ、堪ったもんじゃねぇだろ」
「だからこそ、廃墟同然の町を乗っ取って復興作業をしているんだ」
「人通りもあるし、通行人から毟り取れるし」
「おい。言い方ワリィぞ。金を落としてくれる、といえ」
「貴重な収入源だ。いや、他にも金の成る木を作らなければいけないが」
「大変だね」
「ったりめぇだろ」
「あー、息抜きがほしいもんだな」
「頑張れ」
 応援するしかない。こっちは、まだ三分の一も終わってないし。今は馴染みの顔触れだから心配ないけど、新顔がきたら大変だ。今のうちに、法整備の準備を進めないと。重い鈍器の全書の前に座る。開いたページに目を戻せば、二人の視線が刺さった。ジトっとこっちを見ている。
「な、なに」
「いや、よぉ」
「この町には、女が少ないことを思い出してな」
「なにそれ。一応、他にもいるじゃん。女の人」
「ただ、野郎の割合がデケェだろ、ここ」
「あぁ。この比率だからこそ紳士協定が成立している場合もある」
「なにそれ。もしかして、疲れすぎて頭逝かれちゃったの? 少しは休んだら?」
「だからよ」
 グッと腕を引っ張られる。なんだ、人が代わりにできる業務を引き継ごうとしたのに。
「先に唾つけちまった方が楽か、って思ったわけよ」
「余計な心配もせずに済むしな」
「わかった。二人とも、疲れてるんだね。ゆっくり休んだら?」
 シュッと手刀を構えると「ガチに決まってんだろ」と返される。「少しは不安要素が解消されれば、こちらの作業の手も進むんだがね」とメイスが人質を取ってきた。くっ、それなら自分でやる気を出せ! やる気!! 手つかずのカップを引き寄せる。
「砂糖、どのくらい?」
「お前」
「抱いていいか?」
「寝たら?」
 話にならない。


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