二人の要求(消火後)

「なぁ、ななしよ。着てみてぇとは思わねぇか?」
「これは俺たちがお前を想って、選んだものだ。よく似合うと思うぞ?」
「似合わねぇってことは絶対にねぇ。なぁ、着てみようぜ?」
「きっと似合うぞ?」
「そんなこといったって。着るメリットなんてないじゃない」
「クソが!」
「クソッタレ!!」
 勢いよくゲーラとメイスが壁や床を蹴った。そんな、悔しがられても困るんだけど。二人が見せた服を見る。ヒラヒラとしていて、上着は肩が落ちるサイズだ。パーカーだけど、下はノースリーブのワンピース? 胸元にリボンが付いていて、普通に見かけないヤツだ。デザインというか、独特。いったい、どこで買ったのだろう?
「そもそも、これいくら?」
「俺らの給料二ヶ月分」
「意外と高かったぞ」
「馬鹿なの?」
「馬鹿じゃねぇ!!」
「ロマンに生きているんだ! 俺たちはッ!!」
「そんな韻を踏まれても」
 さらに困るし。しかも二人がとても悔しがってる分、私からいえることはなにもない。それに、着たい気分じゃないのも本当だ。(なにか、嫌な予感もするし)大体、その勘は当たる。けれど、それで二人の機嫌が戻るわけはなかった。機嫌というか、調子というか。ともかく、二人はまだ落ち込んでるままである。
(どうしよう)
 一番は、二人の望みを叶えることだ。それが手っ取り早い。けど、着たら着たで最後のような気はするし。ジッと、俯く旋毛を見る。私が着ないことを見てか諦めてか「はぁあ」と溜息を吐きながらベッドに向かった。のそり、と人のベッドに座る。それは私のだ。しかも寝るところだったし。これでは寝られない。仕方ない。とりあえず、望みを叶える振りをしておこう。
「もし、着たとしても。えっちなことはしない?」
 念には念を入れて、念を押してみる。けれども、二人はなにも答えない。寧ろ、沈黙を保つだけだ。おい、どういうことだ。いってみろ、と口が悪くなる一歩手前である。本当に、どういうことだ。
「ねぇ。着ても、そういうつもりは」
「男のロマンに生きてるっつったろ」
「給料二ヶ月分の大枚を叩いたんだぞ」
 察しろ、という風に顔を逸らされましてもね。こちらとしては今すぐ寝たいという気持ちもありまして、抗えない疲れと睡魔もありまして。そう口に出したいけど、手頃な言葉が思いつかなかった。


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