オレンジ

 家に帰ると、オレンジタルトとジュースがあった。珍しい。こんなに手の込んだものがあるなんて。借りた本を置くと、キッチンから二人が出てきた。
「おっ、帰ってきたか!」
「おかえり。用意してあるぞ」
「食べないの?」
「食べるさ」
「コイツも添えてな」
 そういって、ゲーラの手からオレンジゼリーが置かれた。ちょうど三人分。「リオの分は?」と聞くと「冷蔵庫の中だ」と返ってきた。
「オレンジタルトも?」
「そりゃ、また別だ」
「あとで作り直すさ」
 そういって座る。材料も残ってる感じなのだろうか? ゲーラがナイフをクルリと回し、適当に切る。八等分。大きい方はリオの分、と思ったら中くらいのを渡された。
「食べきれるかな」
「できるだろ」
「一切れだぞ?」
 お前の胃袋ならできる、といわんばかりの口振りだ。まぁ、それに変わりはないけど。添えられたフォークを手にして、一口に切る。二人の分を忘れたけど、まぁいいや。先に食べた方がいいだろう。プスリと刺して一口を頬張れば、爽やかな酸味が広がった。そのあとに甘味。どれもこれも、たっぷりとオレンジを使っている。中身はクリームではなくて、ケーキの生地に近かったけど。
「今日、オレンジの安売りでもしてたの?」
「あー」
「まぁ、そんな感じだ」
「ふぅん」
 どこのスーパーのだろう。ジュースに手を伸ばせば、やっぱりオレンジ。私が食べたのを見てか、二人もタルトを食べ始めた。変なの、自分たちで作ったのなら、さっさと食べればよかったのに。テーブルに転がるオレンジも、あとで食べるんだろうか?
「ん」
 といって、ゲーラがオレンジから出た葉を摘み取る。採れたて新鮮なのだろうか? それについた花を剥がすと、私の頭に乗せた。
「なにそれ」
「花だな」
「あぁ、花だな」
「そうじゃなくて」
 行動の理由を聞いてるんだけど。そう聞くけど、黙ってるだけだ。もう一口、タルトを口に運ぶ。「ねぇ」と聞いたら、メイスが口を開いた。
「オレンジの花言葉でも調べてみろ」
 それがヒントだろうか? テーブルにあるタブレットを引き寄せて、調べものをする。検索する欄に文字を入れて送れば、色々な情報が出てきた。『気前の良さ』と。これだろうか?
「これ?」
「違ぇよ」
「もっと上だ」
「これ?」
「そうそう」
「これだな」
 二人の示した言葉に、見当が付かなかった。


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