イースター前の買い物(メイス)

 そこら中に、ウサギの置き物とかを見る。どうやら、『復活祭』に向けての準備らしい。「なんのだろう」と聞けば「救世主のだろ」とメイスが返した。
「バーニッシュの?」
「それを借りれば、旧人類のだな。名前くらいは聞いたことあるだろう?」
 その単語に、確かにと頷いてしまう。確かに、聞いたことある名前だ。ゲームとかでも結構モチーフを見かけたりする。「メジャーだねぇ」というと「そうだな」と返ってくる。
「じゃぁ、私たちの村でしたのも、その名残り?」
「まぁ、そういうところだろうな。その宗教の信仰者もいたからな」
「変なの。新人類と呼ばれたこともあるのに変わったのに、その当時の信仰を持ってるなんて」
「そう人間、上手く突然と変わることはできないというわけだろう。それに、バーニッシュも人間だって、いったのはボスだろう?」
「うん、確かに」
「だったら、旧人類の頃の信仰を持ってても可笑しくはない、という話だ」
「うーん?」
「つまりだ。言葉の綾ってヤツだろう。如何様にも受け取れる、といった感じだ」
「なにそれ。ちょっと、難しい。もしかして『こじつけ』?」
「ハッ、そうともいうか」
 そこ、笑うところ? そう思うものの、メイスが足を止めた。その止めた先を見る。バイクのパーツとか、ギターとかエレキギターの楽器とか。そう思ったら、雑貨屋さんだった。店頭に、ウサギの置き物が飾ってある。値札も付いてショーウィンドウの中にあるから、きっと売り物だろう。
「もしかして、買うの?」
 と聞けば、メイスが顔をこっちに向けた。ジッと、私を見ている。
「ほしいか?」
「いや。なんというか、どこに飾るんだろうって。玄関とか? でも、外に置く場所はないし」
「家の中でも飾れるだろう?」
「それはそうだけど。イースターのときだけ、テーブルに置く感じ?」
「それもいいだろう」
「そうなんだ」
「なら、買うか」
「えっ」
 聞き返す暇もなく、メイスが店に入ってしまった。え、どうしよう。私も入った方がいいのかな? でも、もう一方のも気になるし。おろおろとしていたら、声をかけられる。どうやら、道に迷ったのらしい。えっ、聞かれても困るんですけど。
 そう思ってたら、メイスが戻っていた。手には、別の紙袋を持っている。
「邪魔だ」
 そう見下ろして邪険にすると、聞いてきた人が去った。そんなに怖い顔をしなくてもいいのに。
「ところで、なに買ったの?」
「さっき見てたヤツだ。というか、一人で突っ立っているな。せめて誰かといろ」
「といっても、先に入っちゃったし」
「悪かった。今度から連れて行くとしよう」
「うん?」
 なんか、すれ違ったような? そう思いながらも、一緒に帰った。重い。こんなことなら、ゲーラも来てほしかった。そう思ったら、メイスが片方を持った。瞬間、そっちの方へメイスの体が傾く。
「大丈夫?」
「大丈夫だ」
 そういうものの、虚勢を張ってるようにしか見えなかった。


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