イースターエッグの用意

 イースターエッグの準備をしながら、子どもたちの嘘に付き合う。今年のイースター、復活祭は四月の中旬にあるのらしい。この手の詳しい人が「教会とで違うが」と前置きをして、祭りを始める日にちを教えてくれた。──豪華な食事は用意できないけど、楽しい遊びや催しを用意することはできる──。そういうわけで、村の大人たちと協力して、イースターエッグの準備をしているのだ。幸い、私たちはバーニッシュ。鶏もある程度いるし、不足した分を、バーニッシュの炎で賄えばいい。あとは、色や模様を付けるだけで。
 バーニッシュの炎を固めて、小型の卵を作る。なにか、模様を付けた方がいいんだろうか? けど、思い付かない。レパトリー、というものが思いつかないのだ。ボーッと、卵型の鋼鉄を眺める。バーニッシュの炎を中に灯せば、少しは温かくなるのだろうか? そんなことを思ってたら、ヒョイッと二人が現れる。
「まだ終わらねぇのか?」
「これに彩色を施すつもりか?」
 それぞれ好き勝手いってくる。ゲーラは私の手元を覗き込むし、メイスは私の作ったものを見た。基本、炎を固めて形作ったものは、生み出したバーニッシュが死なない限り残る。なので作り置きをしても充分なのである。「数が多くねぇか?」というゲーラに「多いな」とメイスが返す。「サービスで作っているのか?」と尋ねてくるので「そうなの?」と聞き返した。
「多い方が良いかと思って」
「まっ、当たりが多い方が嬉しいわな」
「プレミアム付きは他に任せるとしよう」
「なにそれ」
「子どもたちが数を競い合うのに最適だな、という話だ」
 そういって、メイスも炎で作り出した。ゲーラも続いて、燃やす。ボウボウと燃え盛る炎の中で、マグマが冷え固まる。手の平大の火が段々と小さくなって、指で抓めるサイズの大きさになった。どうやら、デザインに力を入れたかららしい。ひし形だったり丸だったりギザギザだったり、色々だ。
「すごい」
「ポピュラーなものだと、もっとあるぞ」
「確か、こんなのもあったか?」
 メイスが説明をしている間に、ゲーラが別のヤツを作る。次はパチパチと電撃が走ったような模様だ。浮彫をなぞる。ひし形、丸、ギザギザ、パチパチ。他にもどんな模様があるのだろう。
「なんだったら、お前もイースターエッグ探しに参加するか?」
「い、いい。どうせ、あとで纏めて見れるんだし」
「ふぅん? こういう絵柄もねぇかって探すのも楽しいぜ?」
 隠れた分を探すとなると、もっとだ。とゲーラが私の作ったものを見せる。相変わらずツルツルで、あとで彩色をすることしか考えてない。
「他のヤツらも作ってるけどよ、お目当てのモンを探すのも楽しいぜ」
「お目当て?」
「色々な絵柄があるからな。参加している人数が多い分、個性豊かな卵になるだろう」
「そうなんだ。ところで、調達の方はどうだったの?」
「おう、バッチリだぜ」
「必要な分は揃えたつもりだ」
「そうなんだ。なにを?」
「いわれたもんだな、足りねぇ小麦の分とか」
「肉はないがな、量は足りるはずだ」
 パン職人もいるから、なんとかなるだろう。と楽観的なことをいう。(パン職人)聞いたことはないが、なになにがほしいとの会話は聞いた覚えはある。
 作ったイースターを片付ける。それを「どうするんだ」と聞かれたので「他の人に渡す」とだけ答えておいた。外装を整えたから、あとは塗るだけでいいだろう。ゲーラとメイスの分も渡そうとしたら、取り上げられた。
「えっ、いいの?」
「いいんだよ。別に用意すっから」
「俺たちの分はあとで用意をする」
「ふぅん」
 よくわからないけど、それならいいか。とりあえず得意な人に渡しに行った。


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