野晒しの冬

 冬に強いとしても、バーニッシュにとっては気が滅入る。外は寒いし、地面は凍る。霜も降れば、地面に足跡も残った。大小様々なタイヤ痕や一定の道だけが溶ければ、それだけでバーニッシュの移動がわかる。だから、雪が降った日は休まなきゃいけない。それか、普通に歩いて移動しなきゃいけない。足跡を雪が隠してくれるし、それだけでバレることはないからだ。バーニッシュサイクルを出すときも、雪の積もらない道を選ばなきゃいけない。それだけ、火に魅入られた一族は大変だということだ。(いちぞく?)自分の選んだ単語に、首を傾げる。言葉のレパトリーは増えてきたが、意識的にチョイスすることは、まだ難しそうだ。毛布に包まる。パチッと目の前で火が弾けた。
(さむい)
 はぁ、と息を吐き出せば白く濁る。煙草の煙と違って、変に匂うことはない。寝静まってるからか、誰も起きる気配がない。それぞれ体を丸めて、火に背を向けていた。熱を逃がしたくないんだろう。私も横になりたいけど、ゲーラとメイスがいるからできなかった。二人して、私の頭に頭を預ける。二人分の体重が、私に乗る。重い。けど見つけた毛布を預かった手前、無碍にすることはできなかった。
(少なくとも、毛布一枚よりは温かいし)
 ペラッと薄い毛布を捲る。触ってみても、ザラザラとしている。でも、ないよりはマシ。雨曝しで隙間風が荒ぶ中、二人が風除けになっていた。
 壊れた屋根の隙間から、雪が落ちていく。火を起こした場所以外には、シンシンと降り積もった。それ以外は溶ける。火に触れて、水となって空気に消えた。
(ひまだ)
 寝たいけど、誰も起きないし。寒くて寝にくいし、私も横になりたいし。でも二人が寄り掛かるからダメで。だからこうして、誰もしない寝ずの番をしている。私も眠りたい。
(あとで、おぶってもらおう)
 多分歩ける体力を残ってるとは考えにくいか、あとでお願いしておこう。そう考えながら、半壊した店の中で過ごした。


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