インフェルノマルゲリータピザ

 バーニングレスキューに属するルチアという女の子は、そこで武器の開発やギアの整備をする係だ。片やエリス女史は『神童』と謳われ──私たちを苦しませるエンジンを開発したものの──恐らく最高峰といえる頭脳を持つ女性だ。ついでにクレイ・フォーサイトが財団として貯めた僅かなお金もある。
 それらのお陰で、四肢や指を失った仲間も以前と同じように活動できるようになった。
 よって、いんふぇるのまるげりーたぴっつぁなどというものを食べれる。なんかこの辺りで一番美味しいピザなのらしい。
 ボスも熱々を「はふっはふっ」といいながら食べてる。ゲーラもメイスも同様だ。
「あっつ」
「うん、焼き立てだな」
「ガロのヤツがやけに勧めるかと思ったら、こういうことか……」
 ガロにしては珍しい。アイツの舌も役には立つんだな、とボスは毒めいたことをいった。まぁ、あの青年に関しては同意見だ。なにか食べ物を勧められると、とんでもない味がするのではないかと思う。
 私もピザを口に運ぶ。とてももっちりとしていて、まるげりーたとやらいうケチャップやチーズも美味しい。
 もぐもぐと食べると、残り一枚になる。
「あっ」
「ボス、どうぞ」
「いや、いい。追加を頼むから、お前たちで食べろ」
「気に入りましたか、ボス」
「じゃぁ、俺も頼むぜ! オイ、インフェルノマルゲリータピザ、もう一つ追加ァ!!」
「声が大きい! じゃぁ、貰いますね、ボス」
「あっ、ズリィぞ! 手前ぇ!!」
「あぁ」
「ところで、これ。足りると思うか?」
「あっ」
 真ん中に積み上がる皿の山を見て、私たちは固まった。ボスも例外ではない。
 私の財布には紙幣二枚、ゲーラの財布には硬貨数枚、メイスの財布には紙幣が五枚。対してボスには極力必要以上に出してほしくないから、論外である。未知数だ。
 いっせいの、で手持ちの全額を出す。
 見ての通り、まったく足りない。
(どうしよう──)
 顔が青ざめ、目の前が真っ暗になる。
「……逃げやすか、ボス!」
「やめろ! 僕たちは食い逃げ犯でもないんだぞ!?」
「あぁ。もうテロリストから足を洗い、一般市民として生活しているんだ。荒波を起こすところか犯罪を犯すなど、言語道断だ!!」
「なら、どうすれば……」
「どう見ても足りないじゃねぇか!?」
「こうなったら、俺たちだけでも……働いて、返すしか」
「なっ! お前たちだけにはやらせないぞ!? やるなら、僕もだ! 一緒に皿洗いをするんだ……!!」
「やったことあるんですか、ボス」
「ウェイトレスみたいなオーダー受付もあるみたいですが」
「違う! たまたま、ガロのヤツに付き合わされただけで……!!」
「おっ、元マッドバーニッシュのヤツらじゃねぇの。どうした?」
(あっ)
 また異口同音というべきか。同じタイミングでその声に振り返った。
 ガロ青年だ。

 ──かくして。彼に金銭を借りるという形で支払いを行うことはできたのだった──。

 後日借りた分を返しに行くと、追加で仕事を頼まれたのは、また別の話である。


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