食器洗い

 メイスのカップは、珈琲の匂いが強い。逆にゲーラのは珈琲と甘い匂いがして、リオのは珈琲と紅茶の匂いが混ぜこぜになっている。要するに匂いが混じっているのだ。
(洗い足りなかったのかな)
 とはいえ、食器を洗うのは当番制である。私のせいであるし、誰かのせいである。可能性は否定できない。
 洗ったカップをもう一度シンクに引き戻し、洗剤に浸けておく。これだけでマシになるんだろうか。他の食器も洗う。
「なにをしているんだ?」
 テーブルを拭いたリオが尋ねたので「浸けてる」と答える。「どうして?」とも尋ねてきたので「匂いが残ってたから」と答えた。そうしたら、リオは「あぁ」と答える。
「確かにしていたな、匂い。雑味になってないから、気にしないではいたが」
「そうなんだ」
「もう少し、洗剤を入れた方がいいぞ。濃い目の石鹸液を作るんだ。手軽だぞ」
「手軽ねぇ」
「そうだぞ」
 相槌を打ったら、リオに上目遣いで見られる。その視線の質問に「なに?」と尋ねると「いや」と答えられた。
「なんか、似ていたなと思ってな。ゲーラの口調に」
「ふぅん」
「それはメイスだ。お前、案外あの二人の影響を受けているんだな」
「そうかな、私はそうと思わないけど」
「知ってるヤツから見れば、そう見える。あぁ、それと」
 リオが使ってるスポンジを指差しながらいう。
「それもちゃんと洗った方がいいぞ。ハイターに浸けたりしてな」
「リオもそれ、やってるの?」
「たまに」
 他の二人にもやってほしいものだ。そうボヤキながら、リオは洗い物を手伝ってくれた。


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