卵焼きなら作れる

 ボッとコンロの火を付ける。フライパンに油を注ぎ、野菜と肉を炒める。前までは考えられなかった生活だ。主に食料の面で。
 新鮮な野菜に新鮮な肉、新鮮な魚──それらを入手できる金銭を正式に得られる今だからこそ、こうして料理をできるのだ。でも、ボスはなにを食べてるんだろう? 普段から料理をしているようには思えない。
「で、ボスはなにを食べてるんです? ちゃんと食べてます?」
「食事に誘ったと思ったら、それか。いわれなくても」
「心配してるんですよ? ちゃんと答えてください」
 畳みかけると、ボスが言葉に詰まる。文字通り、ソテーの一口を入れて黙った。
 ゲーラのフォークが泳ぐ。
「そもそも、ボスって料理するのか?」
「するに決まってるだろ! お前らと一緒にするな」
「確かに我々はインスタント麺や保存食で飢えを凌いでる面はありますが」
「飢えを凌ぐな」
「三食ちゃんと食べようよ……」
「お前がいうか?」
「ほら、ななしも食事を抜いたりしているぞ」
「……ともかく」
 メイスが話に流されずいう。
「ボスも我々のことをいえないのでは?」
「はぁ?」
「この前、ボスの部屋から爆発する音が聞こえましたし」
「なにっ!? もうプロメアはなくなったんじゃないのか!?」
「それ、もしかして卵焼きを作ろうとしてオーブンに入れたんじゃ」
「うっ、うるさい! 僕だって料理の一つくらいはできる!! め、目玉焼きとか……なら」
「目玉焼き」
「まぁ、それも立派な料理ですものね」
「凄いぜ! ボスッ!!」
「お前ら! いい加減にしろ!! とにかく、この話はこれで終わりだ! 以上!!」
(ボスが駄々を捏ねた……)
(珍しい……)
(まさか本当に作ってないのでは……)
 様々な不安が胸中を駆け巡った。そしてボスはプンプンと怒りながらも、私の作った量をパクパクと食べた。


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