目逸らし
ボッと炎が出る。いつバーニッシュになったのかはわからないけど、いつのまにかなっていた。炎を出さなくても、ヒソヒソと囁き声が耳元で聞こえる。気のせいかな、と思ったらそうではない。他の皆にも聞いたら、自分も同じだといわれた。曰く、炎の意思だという。
(燃やし尽くすことが、使命)
ポンッと瓶の蓋を指で弾く。コインみたいに弾いて飛ばしたら、炎で溶けた。
後ろで足音が聞こえた。
「こんなところにいたのか」
「相変わらず、酷い臭いだな」
「天然な焼却炉に、再利用できるのも発掘」
一石二鳥じゃない? そう二人に尋ねると、押し黙った。
「鼻がもげる」
「洗ってんのか?」
「少なくとも、戻るときは体洗ってるからセーフ」
服も一緒に洗って乾かしてるからセーフ。
そう続けると、後ろでネジが落ちる音がした。コロン、コロンと壊れたテレビの角に当たる。
「そ、そうなのか」
「うん」
「で? リサイクルした用品については?」
「引き摺る」
「引き摺るのかよ」
ゲーラが呆れる。
「だって。アーマー纏ってバイク出したら、溶けちゃうじゃない」
「ぐぬぬ」
「まぁ、それはそれとして。戻らないのか?」
村に、といって村のある方向を指すメイスに、口を噤んでしまった。
戻れない事情が、あるんだよなぁ……。
「もう少し、天然焼却炉をしてから……」
目を逸らすと、ガシッと襟首を掴んで引き摺り戻されてしまった。