スニッカーズの誤解

 少し食べたところで満腹になる。これをどうしようか持て余していると、ヒョイッと横から奪われる。ついでにもう一つ奪われる。手持ちの食糧は残る一つになった。食べ差しだ。
「思ったんだけどさ」
「あ?」
「どうしてゲーラとメイスはそう、人のを盗るわけ?」
「お前だけだ。食べきれない分を買うからな」
「えっ、ちゃんと計算して買ってるのに?」
「手前ぇ、もう満腹になっただろ」
 それはそうなんだけど、ちょっと話が違うと思う。手持ちの食糧をジッと見る。『ナッツぎっしり確かな満足』確かな空腹とバンッと購買欲を掻き立てる絵と一緒に覚えた英語が、頭を過った。
「えーっと。コカ・コーラ効果?」
「はぁ?」
「ほら、しゅばしゅばっと出て、しゅびしゅびっと出て、見た人の頭に残るヤツ。で、購買意欲を」
「サブリミナル効果か? で、買っちまったと」
「うん。ついでに村でも人気だったし」
 喜んで食べる人とか、いたじゃない。そう伝えるとゲーラがジッと見てきた。
「なに」
「いんや、記憶になかったもんでね」
「嘘でしょ」
「いいや、本当だ。なにせ、チョコレート菓子は溶ける」
 サクッとメイスが齧ると、人の熱で溶けたチョコレートが口元に付く。
「だからそこまで、優先的に取った覚えはない」
「見間違いじゃねぇのか?」
「そうかなぁ。なんか見た覚えはあるけど」
「あっ。コンボは見つけた覚えがあるぜ」
「遥か昔の話だな。それに村の食糧とは訳が違う」
「わぁってるよ」
「お腹に溜まって栄養がたくさんあるものを優先的に取ってたからなぁ。でも」
 サクッと残るお菓子を食べる。口の中で、ゴロゴロとナッツとヌガーが転がった。今更だけど、このヌガーの感触、ちょっと苦手だ。
「もうバーニッシュ関係なく自由になったから、良いのをたくさん食べれるね」
「急に話を纏めだしたな」
「うるさい。あっ、あー!」
「盗られたな」
 横からゲーラが手元を覗き込んだかと思うと、口でそのまま奪う。そして蛇が丸呑みするみたいにチョコバーを咥えると、サクサクと指で底を押し始めた。
「ちょっと!」
「小腹が空いてんだよ。んで、食べねぇなら貰うってぇだけの話だ」
「食べてたのに!?」
「食べれなかった、の間違いだろ。放っておいたらカビるぞ」
「うそ!?」
「嘘、じゃぁないけど本当だ」
「どっち!?」
 ゲーラとメイスに翻弄されながら、消えたスニッカーズの行方を追った。


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