欲張り分割

 欲張ってトリプルアイスクリームを買ったが、どこから食べればいいのかわからない。
「馬鹿か?」
「馬鹿だな」
「そこまでいうことないじゃない」
 そういいつつも、黙って奪われるアイスを見る。というか器用だな。クリームソーダとマカロンマカロンが消えてなくなった。
「マカロン」
 一番食べたかったアイスの消滅を呟くと、メイスがスプーンを突き出してくる。
「仕方ないな、ほら」
「っつか、クリームソーダはいいのかよ」
「見栄えを気にした」
 やっぱり狙った通り、マカロンマカロンは美味しい。感じるピスタチオとラズベリーの味に舌鼓を打っていると、無理やりスプーンを突っ込まれる。
「うぐ」
「買った本人なんだから、責任取って食えや」
「傍から見りゃぁ、俺たちが奪ったも同然だがな」
 もぐもぐとメイスがアイスを食べながらいう。
「でも、現に困ってたのは事実だし」
「あぁ、あのまま見てたら溶けてたな。ありゃぁ」
「まぁ、見てたらの問題だ」
 畳みかけるだけでこっちのフォローはしてくれないんだね。知ってた。ナットゥユーを一口頬張る。ダメだ、こっちの方が当たりだったかもしれない。コロコロと口の中で転がるナッツに、頬が綻ぶ。
「ワッフルが美味しいんだよね、やっぱり」
「カップも最強だぞ」
「捨てる必要があるがな。シンガポールだと罰金だ」
 意外にもメイスが掌を返した。それに「はぁ?」とゲーラが掴みかかる。実際には掴んでないけど。言い方がそれだ。
「ポイ捨てはできねぇってことだ」
「知ってらぁ、それくらい」
「ついでにそれもな」
「わかってるよ、もう」
「おい、ちょっと待て」
 既に空になったカップに、ワッフルを包んでた紙を丸めて捨てる。ゲーラに気付かれた。
「なに」
「何気にゴミ箱にしてんじゃねぇよ」
「今朝のゴミ出しも忘れてただろ、お前。俺たちが代わりにやったんだ。だからお前も代わりにやれ」
「おい、メイスまで」
「ゴミ箱、あったっけ」
「さぁな。あの辺にあっただろ」
 クイッとメイスの指した方を見れば、先のアイスクリームがあった。
「おいおい。俺に奢れってぇのか?」
「別にそこまではいっていないが。反省の色があるとするならば貰おう」
「お持ち帰りする? 確かバラエティパック売ってた」
「溶けるだろ」
「溶けるな」
 言外に「馬鹿か」「馬鹿だな」というのはやめてほしい。そう思いながら指についたアイスを舐めた。


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