幹部が幼児化したOMAKE─ななしが幼児化した

 件の件以降、エリスの個人的な研究の成果が進んだ。これで夢が叶うのも嘘じゃなくなる。鼻歌を歌いながら、仕事のデーターを纏める。研究所で仕事をしていると、一件の着信が入った。ななしからである。ピッと応答に出る。画面に焦燥したゲーラとメイスの姿が映る。以前ななしに頼んで、被験者になった二名だ。スンッとエリスの意欲が落ちる。
「もしもし」
『テッメ! また変なことをしやがっただろ!?』
『ななしが小さくなったぞ!!』
 いきなりの不満である。仕事の一環として依頼を出したのだから、謝礼金は出るはず。以前も頼んだときに、研究所から振込は降りたはずだ。ななしからその点に関する不満はきてない。
(可笑しな話)
 自身の映像はオフにしたまま、エリスは対応をする。
「その割には、充実しているように見えるのだけれど?」
『うっるせぇ! あのままの状況にはしておけねぇだろ!?』
『身なりを整えるのは当然のことだろう。ふざけるな!!』
 それはどっちのことに対してなのか。エリスの判断が迷う。そもそも、電話してきたことも遅い。ななしの状況を見れば、一目瞭然だ。
 ──そこの自宅にはない、女児用の服でななしがおめかしをされている。
 エリスは淡々と答えた。
「ひどく楽しかったんじゃなくて?」
『たっ、楽しいわけねぇだろ!! 馬鹿が!!』
『いきなり小さくなって肝を潰した、こっちの身にもなってみろ!!』
 怒声が電話越しから飛ぶ。ゲーラは図星を突かれ、メイスは冷静を装い状況を話す。声を荒げた二人を見ても、ななしの様子は変わらない。小さな手で、メイスの髪を掴んでいる。
『で、コイツは戻んのか!?』
「戻らなかったらどうするの」
『それなら面倒を見てやらねぇといけないだろうが!!』
 まさかの返しである。(無理に戻せとはいわないのね)育てる気満々の発言である。(まぁ、無理に戻したら副作用が強く出る可能性があるし)その判断は、強ち間違いではない。カチッとキーを押す。マウスを動かし、別の画面を開いた。これまで集めたデータの集成である。
「それで? いつまで面倒を見るつもりなの?」
 悪ノリをした。研究者のエリスが被検体の様子とデータを見れば、結果は一目瞭然である。だが暇潰しをした。この質問に、ゲーラとメイスが動揺した。
『んっ、んなの』
『成人するまでだろう。目安として』
(目安)
 つまり成人しても世話をする可能性があると。
「手は出さないの」
『はっ、はぁ!? 出すわけあるかッ!! 相手はちっちぇぇガキなんだぞ!?』
『歳を言い訳にしたくないが、流石に二回りも小さい相手にはできん』
 同意のないなんたらはしない──という良識は持っているようだ。ペドフェリアで手を出す、とは良識の外れた行為だ。「とりあえず、彼女の状況を教えてくれる?」悪ノリをやめて、冷静に仕事へ移る。『お、おう』とゲーラが答え、メイスが詳細に説明をした。(ふぅん)とエリスは冷静に頷く。どうやら、薬の量を少し多めに出してしまったようだ。
『っつーわけで。ななしが小さくなっちまったって話だ』
『貴様から貰ったというクッキーを食べたせいでな』
「他の成分が作用したのかしら。ともかく、しばらくすれば戻るでしょうね」
『しばらくって、いつだよ』
『その具体的な日数を聞きたいんだが』
「彼女の様子を見たら、わかるんじゃなくて?」
 その発言に、ゲーラとメイスが顔を合わせる。納得が行かない様子だ。チラリと画面の中を詳細に見る。奥に目を凝らすと、男児用の服が脱ぎ散らかされていた。他にも子どもの遊具がある。新品だったり中古だったりと様々だ。(もしかして)発症は前日からだったのでは? そんな疑問が、エリスに浮かんだ。
(まぁ、後で聞けばいいでしょう)
 三人の話を統合すれば、自然と見えてくる。研究とは、いつだって暗闇に隠れる真実を探すものだ。今は彼らの好きにさせておけばいい。「しばらくったら、しばらくよ」そういって、エリスが赤いボタンに手を伸ばす。『おい! 待て!!』『まだ話は終わってねぇぞ!?』との荒い言葉が電話から出る。切る間際の捨て言葉に近い。それら一切を無視して、エリスは電話を切った。
 しばらく着信拒否にする。そうしてエリスは仕事に戻った。


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