幹部が幼児化した−そのD

「で? そういうわけで、俺たちが全裸だったと」
「うん」
「マジかよ。全然記憶にねぇ」
「なくて当たり前かと思う」
 枕に顔を突っ込みながら、そう答える。案の定、二人は全裸だった。優雅な目覚め、なんてものじゃない。目覚まし時計は二人の叫び声だったし、もう上半身裸を見て察した。「とりあえず服着て」「あっ、あぁ!?」「どういうことだ!?」困惑する声が聞こえる。そうはいわれても。この状態でどう説明すればいいんだろう。無理という話だ。「とりあえず、服」と枕に顔を隠したまま伝える。それで話が伝わったのか、二人が慌ただしく動き始めた。ドタドタと音が聞こえる。もう一つの枕を取り寄せようとしたら、ない。クッションも探してみるけど、一つなかった。まさか、まさかな。嫌な予感がする。そういうことを考えて二度寝をしていると、二人が戻った。事の経緯が聞きたいんだろう。叩き起こしてきた。そうしてさっきのやり取りになる、と。回想終わり。じっとりと、信じられないような目が刺さる。
「そんなに信じられなかったら、リビングの壁とか見たら?」
 地味に、テーブルクロスも飾っておいたし。そう伝えると、二人が黙った。なるほど、その辺の身に覚えはあると。へぇ。
「結局、二人のせいで起きたんだから。その辺りのこと、よろしく」
「んなわけねぇだろ!? テメェが妙な薬を持ってこなきゃぁ」
「でも、謝礼金で躊躇いもなく飲んでたじゃん」
 そのことを指摘すれば、二人して黙った。本当、そういうところの息がピッタリだなぁ。
「なんか、ひけんしゃのコメントもほしいとかいってたから、一石二鳥かと思う」
「被験者! やっぱ妙な実験に付き合わされてたのかよ!?」
「それはあの博士の名前が出てから気付け! 薄々、そうだろうとは思っていたが」
(説得力がない)
 一気飲みした人が、なにかいってる。ふぁと欠伸をする。エリス博士と連絡先繋がってるのはアレしかないから、先に報告書を仕上げておこうかな。あっ、乾燥機に入れるの忘れた。水道代、もったいない。
 もぞもぞとベッドから出る。シーツの上に、千切れた残骸があった。正体はいわずもがな、知れている。スリッパを履いて、顔を洗いに行く。そのとき、二人の格好に気付いた。
「どうして、服着てないの」
「あ? 着てるだろーが」
「今からシャワーを浴びるんだ」
「俺ぁ、歯ぁ磨くぜ」
「そう」
 私は顔を洗いたいんだけどな。と思いつつ、二人にバスルームを譲る。空くまで待った方がマシだ。その間に報告書の最後の仕上げを作ればいいし。
 水を飲む。出せる範囲まで書き終えると、ゲーラが出てくる。ヒゲも剃ったのらしい。「ん」と空いたことを告げられるが、まだメイスがいる。入浴中に、シャワーカーテン越しに入れと。ふざけないでほしい。そう思いながら、書き終えた報告書をチェックした。(あ、誤字)見つけたミスを修正していると、メイスが出てくる。お風呂上がりだ。流石に、向こうで髪を乾かさないでくれただけありがたい。
 完全に空いたバスルームに入る。そこでのんびりと歯を磨いてたら、向こうから驚くような声が聞こえた。「はっ!?」「あぁ!?」なんか、一騒動が起きたようである。エリス博士の声も聞こえるし、多分通話中のことだろう。無視して、バスルームで寛ぐことにした。


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