先輩と相合傘

 相合傘っていうのは気恥ずかしいものだ。先輩がコンビニで傘を忘れたってSNSで伝えてきたから、私も慌てて傘を差して迎えに行った。すると、先輩はコンビニの入り口で誰かと一緒に待っていた。男の、人だ。
 なぜかその人と親し気に笑ったあと、「コイツ、俺の彼女な」と照れ臭そうに紹介した。それに、私の顔も熱を持つ。ボッと湯気が出そうなくらいだった。
 慌てて「あの、その」と話を誤魔化そうとしたけど、先輩の手で動きが止まった。
 先輩が、自分の傘を、その人に渡した。え、なんで? 固まる私をよそに、先輩はその人と笑いながら話をした。
「ほら、遠慮するなって。俺はコイツの傘に入って帰るからよ!」
「いや、初代の傘を借りるだなんて。そんな、悪いですよ」
 あ、総代。なるほど。この人は先輩の知り合いというわけか。なんか、先輩が北関東連合なんとかの初代のなんとかって聞いたことがある。
 先輩はパンッとその人の背中を叩いた。そして私に背を向けて、なにやらこしょこしょ話を始めた。「ばぁか! ここは『夫婦水入らず』というだろ? 黙って借りられろ!」「あっ、そういうつもりだったんですか。これは気付かず申し訳ありません」なんか、そういう会話が聞こえた。
 どういうことなんだろう。疑問に思ってると、その人は先輩から恭しく傘を受け取った。
「じゃぁ、お言葉に甘えて。ありがとうございます。初代」
「おう」
 先輩の後輩らしいその人は、ペコリとお辞儀をしたあと、先輩の傘を差して歩いて行った。
 コンビニの前に残されたのは、私と先輩だけ。先輩は後輩を見送ったあと、私にニッと笑っていった。
「じゃ、帰るか!」
 そうして、私の手から傘を奪い取り、私の肩を抱き寄せて傘を差した。
 バレバレ、なんだよなぁ。そういえるはずもなく、私は真っ赤な顔を先輩の胸に隠した。


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