先輩とクリスマス商品
今日はクリスマスらしい。イエス・キリスト誕生の前夜祭に、その当日。日本の冬で一番繁忙期なのがこの前夜祭で、クリスマスに因んだ商品がたくさん並んでいる。
先輩も気になるのらしい。ショーウィンドウの中をジッと見ていた。
「気になります?」
「いや? 別に」
「せっかくだから、買って帰ります? ここからここまで、全部」
「は? 食いきれるのかよ」
「イベントですし、食べます」
「お前、大盛り食えなかっただろ……」
「甘いものは別腹ですよ?」
そう正論を吐いたら、先輩は苦い顔をした。信じられなさそうだ。
「本当ですってば」
「ふぅん?」
そう疑わしそうに見てから、財布を取り出す。そして中身を確認した。私も確認する。
「いい。俺が出す」
「私もほしいのがあるんで」
「だから出すっていってんだろ」
イラつく先輩にほしいものを無言で指差す。目的はホールケーキ。クリスマス商品でもなんでもない。
クリスマス商品のみ買おうとしていた先輩の目には、入ってない。
先輩はあんぐりと口を開けている。
「ふ、太るぞ?」
「ちゃんと運動するからゼロカロリーですもん」
「……それってどういう意味だよ」
「変な意味じゃありませんよ」
先輩の顔がニヤける。仕方ない。ホールは今回諦めて、気になったのを買おう。
ウキウキする先輩がチョコレートケーキも頼む。その分の代金も出して、あとから貰うことにした。
「ほかに、なにかほしいものってあります?」
「お前」
ニカッとこちらに笑いかけてくる先輩に「くさい台詞だなぁ」と言いかけた言葉を飲み込む。
ケーキの箱は向かい側で、近くにあるのはポケットに入ってる手だ。
手持無沙汰なので先輩の袖を引っ張る。それを見た先輩はポケットから手を出して、私の手を握った。
「今日は積極的だな」
「うるさいです」
唇を尖らす私に、また先輩がニヤけた。