パンナコッタを作る
パンナコッタを作る。余った材料を並べて、ゼラチンをふやかす。
「コンニャクか?」
作るものを尋ねる先輩に「違う」と答える。
パンナコッタを作る。水でふやかす間に生クリームを量る。やっぱり少し余ったから、あとでコーヒーを淹れようかな。
「プリンでも作ってんのか?」
尋ねる先輩に「違う」と答える。「ハズレ」とも付け合わせて。パンナコッタは生クリームで、作るまでも簡単。プリンはキャラメルも含めて作るのがちょっと多いのだ。
そう簡単に返すと、先輩は「そうか」と答えた。
パンナコッタを作る。ミルク鍋に計量したものを全て入れて、中火で温める。
「いい匂いだな」
と先輩が冷蔵庫を開けながらいうので「そうですね」と返す。ついでになにか飲みたいものはあるか、と尋ねたら「茶」と返された。渋い。
パンナコッタを作る。ミルク鍋で温めている間に、プリンの器を用意する。
「やっぱりプリンじゃねーか」
と答える先輩に「違う」とまた答える。レシピには瓶を使っているけど、生憎うちにはない。ので、プリンのを使おう。アルミのカップを並べる。
「ちょっとグツグツいってきたんじゃねぇの?」
えっ。先輩の助言に振り向く。見れば、あともう少しで沸騰だ。
クルクルとお玉で掻き回して全体の温度を調整したあと、火を止める。私の努力は空しく、既にミルク鍋は沸騰寸前にまで温まっていた。
用意したゼラチンを、ミルク鍋の中に入れる。全部だ。
「プリンも、ゼラチンを使うんじゃなかったか?」
チーズの皮を剥く先輩に「そうですね」と答える。使うのもあるし、使わないものもある。
「私にもください」
「わりぃ、これで最後だ」
空の箱に、ドッと疲れがきた。
パンナコッタを作る。ゼラチンの塊が完全になくなったので、アルミのカップに注ぎ入れる。数はちょうど三つ。少しレシピの分量より多すぎたか。それとも、カップがレシピの思い通りでなかったか。
調味料の棚を開き、洋酒を取り出す。
「ほー」
「なんですか?」
「いや。お前、甘いのが好きじゃなかったっか?」
「そうですよ」
「それ、苦いだろ」
「そうですね」
それぞれ分量を異ならせて、風味をつける。
「俺に苦い方を食わせるつもりか?」
「ちゃんと味見しますよ」
「味見、ねぇ」
なんでそうも疑わしい目をするのか。
パンナコッタを作る。最後は冷蔵庫に入れて冷やすだけだ。
「あとどのくらいでできるんだ?」
「二、三時間冷やしたあとですね」
「なげぇ」
コンニャク作った方がよくね? と水を差す先輩に「あげませんよ」と釘を刺した。