それぞれの試み(さなげやま)

 猿投山はコンニャク料理が得意だ。そして千芳は卵を使った料理が得意である。猿投山の得意料理は、コンニャクを茹でただけの鍋。千芳は調味料を入れた卵で作ったスクランブルエッグ。どちらもシンプルな料理だが、その分奥が深い。猿投山はコンニャク鍋に合う調味料を開発し、千芳はスクランブルエッグに合う調味料の量を調整する。お互いに得意料理は異なる。あるケースではその腕を活かして美味しい食卓を作り上げるケースもあった。
 ――しかし猿投山と千芳の場合は違った――。
 千芳は口元を押さえ、顔を青ざめる。対して猿投山は自棄になって料理を掻き込んでいた。千芳の得意料理と猿投山の得意料理――つまり卵とコンニャクの相性は、最悪だった。
 卵はホロホロと口の中で崩れる。なのにコンニャクはしっかりと口の中に残る。卵とコンニャクの食感は、対照的だ。千芳の箸は震える。猿投山は乱暴に箸を動かす。
 ――卵とコンニャクの組み合わせによる試みは、失敗した――。
 青ざめる千芳は、重く口を開ける。
「野菜、入れた方がよかったですね……」
「お前のゆで卵も美味いぞ!!」
 半分味の入ったゆで卵を食べた猿投山は、力説した。


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