休話(卒暁後)

 目が痛い。けれども踏ん張らないと、仕事が終わらない。数字と睨めっこをしすぎて、目の奥が痛くなってきた。続いて、頭の奥がチリチリと痛くなってきた。うーん、酷使しすぎたかもしれない。チョコを一口食べたら、渦がヒョイッと取り上げてきた。
「根詰めすぎだろ」
 そう呆れているが、誰がしていないせいだと。(渦は、こういうことは苦手だし)スキャンして読み取るにはアプリとパソコンとの連携などが色々と必要で、結局手打ちが早い。読み取りアプリなりソフトの開発費を考えると。痛む眉間を押さえる。渦が勝手にパソコンを閉じた。
「ちょっと」
「また明日でもできるだろ」
「できないってば。こういうのは、毎日コツコツ続けるのが肝心で」
「それで潰れたら、元も子もねぇだろ」
「うぅ。じゃぁ、これ」
「あ?」
「家計用と仕事とで使った分で分けて」
 正直、この仕訳に時間が掛かったこともある。一瞬で、渦の顔が苦いものになった。「お前、これらを分けて保存とか」「してない。流石に、取引先との領収書は分けているけど。普段の買い物で、一緒に買ったりしてるでしょ?」「うっ」この辺りに時間がかかるといえば、渦がおずおずと切り出した。
「だ、だからって全部を覚えているわけじゃねぇぞ?」
「うろ覚えでもいいから。これで線を引いておいて」
「間違えても、知らねぇからな」
「それを頼りに思い出すから、大丈夫」
 ヒントがないよりはマシだ。カタカタと出費を打ち込んで、今月のグラフを完成させる。お金の動きを可視化させることは大事だ。そしてこれが、地味に辛い。パソコン用の眼鏡を少し上げ、眼球全体を押さえる。休みを入れながら情報の整合性を確かめていたら、渦がジト目で見てきた。
「本当、休めよ」
「楽になりたいの」
 少なくとも、塵も積もれば山になるで重労働になることは避けたい。心配する渦にそうとだけ伝えて、仕事を続けた。残業、つらい。


<< top >>
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -