事後(卒暁後)

 行為を一通りやり終えて、先輩が満足する。中でグリグリと奥を擦られる。(もう、終わったはずなのに)硬さにビクッてなってたら、先輩が腰をゆっくりと引き始めた。「ひっ」喉から悲鳴みたいな甘い声が漏れる。あっ、あっ、と先輩の腰が動く度に、馬鹿みたいに声が出た。甘く上擦った声で、時たま悪戯っぽく腰を奥へ進める。(もう、終わったはずなのに)息を弾ませていると、先輩の腰が引いていく。追いかけるように段々と先が窄んでいって、ちゅぽんと抜かれる。「あっ」と名残惜しさに声を上げて息を吐けば、先輩が満足そうに笑った。ムクリと身体を起こし、抜いたものに装着したものを外す。(ゴム、先端、溜まってる)ついでに先輩の愚息も心なしか、元気なように見えた。でも私の中にいたときよりも、少し折れているような気がする。ふにょふにょだ。多分、親指と人差し指の隙間で測る短さになるのも、そう遠くはない。外されたゴムの口がキュッと強く結ばれて、ポイッとゴミ箱に捨てられる。(なんか、イカ臭いな)エアコンの換気機能、使おうかな。もぞもぞと腕を伸ばすよう働きかけていたら、先輩が横に戻ってきた。私の添い寝をする。(私、まだ抜け出せれないんだけど)男の人だけ、先に余韻から抜け出せれるなんて、卑怯だ。
 のろのろと、気怠い身体で腕を伸ばす。
「ん?」
 なんて、先輩が嬉しそうに笑ってきた。(一泡、吹かせてやろう)先輩の顔が近付く前に、ギュッと頬を抓ってみた。
「いてっ!」
 すぐにさっきの笑みはなくなる。代わりに、涙目が出てきた。しわっと眉も目尻も下がって、悲しそうに私を見ている。手を下ろすと、抓られた場所を押さえていた。いつもとキリッと吊り上がった眉はどうした。と、いいたいところだけど、私も同じことをされたら泣きそうである。とりあえず、原因を話した。
「ずるい」
「はぁ? なにがだよ」
「一人だけ、動けるの、ずるい。全然、うごけないのに」
 誰のせいだと、と文句をいう前に腕が落ちる。まるで残された体力、全部先輩に吸われたみたいだ。全く動かない身体に文句をいってると、先輩が呆れた。はぁ、とあからさまに聞こえるように吐く。
「当たり前だろ。男は女を守るために、早く動けるようにしているんだぜ」
(この令和の時代に、いったいなにをいうか)
「生物学上の問題だろ。諦めて受け入れろって」
「そんな口から出てくるとは、驚きです」
「おい」
「喉が渇いたら?」
 というか、あんなに声を出し続けたからか、喉が枯れかけている。コホッと咳をすれば、先輩が難しい顔をする。のそのそとベッドを抜け出し、パンツを履いた。パンイチで、キッチンに向かう。蛇口をひねる音と、コップに溜まる音。キュッと音が鳴ると、水が止んだ。コップ一杯の水を持った先輩が、戻ってきた。
 ツイ、と手渡してくる。(それが、できたら苦労しないというのに)ボーッと濡れたコップを見たら、先輩が手を引く。それを一口飲むと、私に顔を近付けてきた。(あっ、そういうこと)生温くなった水が入ってきて、一滴も零さないよう、舌が架け橋を始める。けれど、そう簡単にはいかないことで。ツッと口の端から垂れた。
 一口分を渡し終えて、チュッと離れる。
「こうして飲ますから、大丈夫だろ」
「じゃ、ない」
 全然そうじゃない。と返したのに、素知らぬ顔で隣に潜り込んでくる。一人だけ満足して、ギュッて抱き締めてきた。(そもそも)先輩だけパンツを履いているのに卑怯だと思いつつ、考える。
(毎週、こうして足繁く通ってるのって、いったい)
 ガソリン代とか、大丈夫なんだろうか? そう事後の間に出た疑問を聞く余裕も持てず。ドックンドックンと跳ねる先輩の心臓を子守歌にして、一旦寝た。もう先輩の行為で体力を使い果たして、これ以上の活動は無理だった。
 太腿の辺りに当たる硬いのは、気にしないでおこう。
 先輩の肩に顔を埋めた。


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