お預け禁止(卒暁後)

 とっても眠い。想像以上に眠い。頭もろくに働かないし、とても眠い。こういうときに、頭を起こすものを摂取すればいいのでは? とてもダメ。それよりも寝た方が早い気がする。のろのろと渦に近付き、後ろからギュッと抱き着いてみた。床に座り込んでいるから、抱き着きやすい。首に抱き着いて背中に圧し掛かれば、ビクッと渦の身体が跳ねた。あっ、一機飛んだ。
「いきなり、なんだよ」
「いや、怠いし眠くて」
 やる気回復、とばかりにギューッと渦に抱き着く。いつかのお返しだ。渦も渦で、私に抱き着いてやる気回復みたいなことをした。けれど、どうしてか、どうも体力は回復しない。頭も重いし眠いし怠いし、肩も凝る。「副作用かなぁ」「昨日まで元気だったろ」「数日は安静だって話だよ?」グリグリと渦の顔に頬ずりをする。あっ、またミスッた。一機飛んで、ステージの最初からやり直しとなる。
「あーあ。汎ミス」
「誰かさんのおかげでな! クソッ」
「また出だしの敵から。少しは休憩したら?」
「お前のせいで集中できないんだろうがッ!!」
「勝手に人のせいにしないで」
「事実だろうが!」
「そこまで好きなんだ」
 あっ、疲れてるからいわないでおこうと思ったのに。嘘から出た真、正面切ってメンチ切った渦の顔が、みるみるうちに赤くなった。(図星なんだ)ふぅ、と鼻から息を吐いて渦にすり寄る。腕をもう少し胸の方へ垂らして、顔と首との距離を狭めた。私より筋があって、喉仏がある。(ちょっと汗臭い)緊張しての発汗かな、と思いつつ渦の首に鼻を寄せる。
「お、おい。待てって」
「んー?」
 セレクトボタンで、ゲームがポーズを取る。一時停止の状態だ。ゲーム機は床に置かれて、渦の片手が床に着く。もう片方が、私に伸びた。髪を触る。ゴクリと、渦の喉仏が動いた。
「する?」
「えっ、はっ? いいのか?」
「ん、キスまでなら」
 それ以上は、ちょっと今の気分じゃない。怠いし肩痛いし凝るし。ツン、と目を閉じて渦に唇を差し出す。いつでもキスができる状態だ。それにそそられたのか、ジッと渦が熱く見つめてくる。そうっと頬を包んでくる。なにを思ったのか、私を剥がしてきた。グッと肩を剥がしてくる。
「なに」
「今の体勢だとやりにくいだろ」
(やる気なんだ)
 と思いつつ、渦に付き合う。お互い、正面を向いて座り直した。渦が近付いて、覆い被さってくる。あっ、頭がズキンときた。目を閉じても、肩の凝りを強く感じる。けれども、渦の唇は柔らかく感じた。熱いし、少し震えている。ちゅぱっと唇が離れる。薄く目を開けると、渦の口も薄く開いていた。熱い視線が降り注がれる。
「ウィンナー、食べたいかも。なんか、お腹空いちゃった」
 免疫をフルに作るためにエネルギーを稼働し、胃袋と脳が空腹を訴えるという。食欲を訴えると、渦が難しい顔をした。「まぁ、気持ちはわかるけどよ」同意をしつつ、なにか文句をいいたそうだ。気になる足の間を見ると、あっ。そういうことか。
「ごめん」
「噛まれたら嫌だからな。極太のウィンナーでいいのか?」
「ジューシーウィンナー。肉汁のいっぱいある美味しいヤツ」
「へいへい。んじゃ、買ってくるぜ」
 チュッと唇に軽くキスを落としてくる。予約代わりだろう。代わりに買い物へ行ってくるといった渦が、トイレへ向かう。そのまま扉を開けて、中に入った。(あっ)これは絶対時間がかかるな。一先ず、体調が悪いことは事実。ご飯も考えるついでに、横になることにした。
 当分出ないことを見て、ちょっと寝る。熟睡している間にブランケットがかけられていて、渦がちゃんと食べれるよう献立含めて一式整える。それが寝惚けて見る夢じゃなくて現実だということは、認識するまで少し時間がかかった。
(けど)
 そのあとは、絶対アレだろうな。という確信だけはとてもあった。


<< top >>
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -