(無題_1)いぬむた

 コンビニで買ったチョコレート、一枚だけかと思ったら三枚入りだった。仕方なく先輩にも一枚渡す。残り二枚は私に、と思ったら催促してきた。
「なに」
「もう一枚くれよ、それ」
「なんで?」
「くれよ」
 まどろっこしいな、というように先輩はいう。けど私は嫌なのであげない。
 もぐもぐと一枚を食べる。というか、そもそも食べるのが早すぎるんだ、先輩が。
「もっとゆっくり食べたら?」
「あ? スピード勝負なんだよ、こっちは」
「なら食べる暇もないんじゃ?」
「糖分」
 タイピングを一切止めることなくいう。簡潔すぎる言葉だ。訳すなら『脳に糖分がほしい。だからそのチョコレートを寄越せ』ということだろう。しかしその貴重な時間を無駄にしてでも、私は食べる。
 一口噛んで、一切れを食べる。そうして三切れ目ですべてを食べ終えると、先輩がガチギレした。
「おい。くれっていっただろ」
「聞いてないもん。ガムならあるよ?」
 ほら、とミント入りのガムを渡す。食欲抑制と眠気覚ましの併用だ。
 そして封を開けてあげようとしたら、いきなり胸倉を掴まれた。
「いい加減にしろよ?」
「は、い?」
「俺は、時間がないんだぞ」
 と警告するような言い方をしながら、先輩は突然口を塞いできた。
 乱暴なキスだ。押し付けるようなキスのあとで歯茎を撫でてくる。それにビクッとしていたら押し倒される。その瞬間、ゾワワッと背筋に粟が立った。
「んんっ!?」
 キュンッと熱くなった腹の奥を悟られたくなくて、脚を閉じる。膝小僧を合わせていたら、無理やり脚を開かされる。
 太ももに擦れるズボンの生地で、腰が跳ねた。
「ひあっ!?」
「とんだ淫乱だな。キスだけでその気になったのか?」
「ち、ちが……」
「ほんっとう、お前は生意気だよ」
 顔と顔同士を擦り合わせて、腰も撫でてくる。その今にも脱がしてきそうな手付きに、思わず体が反応した。生唾を飲み込む。
「期待しているのか?」と耳元で先輩が尋ねてきたけど、ギュッと目を閉じることしかできなかった。


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