撫でてみろと要求(在学中)

「ちょっと、五分間だけ触ってみないか?」
 いきなり先輩が真面目な顔をして聞いてきた。いったいなんだ、突然。しかもドキドキと心臓が煩そうに、顔を真っ赤にしている。「なんで?」と聞いてみれば「どうしてもだ!」と胸を張って答えてくる。(どうせ、変なところから知識を入れてきたんだろうなぁ)と思いつつ、その戯れに付き合う。
「触る場所は? どこですか、制限は?」
「どっ、どこでもいいぜ!」
「本当に? 急所でも?」
 そう悪戯半分に聞いてみると、先輩が「うっ」とたじろぐ。さっきの威勢はどうした。垂れた眉がキュッと吊り上がる。
「そのときは、覚悟しろよ」
「はいはい」
 つまりはそれ以外が範囲だと。先輩を適当なところに座らせる。「なんでだよ」と聞いてくるので、「身長差を考えてください」とだけ返した。突然の成長期で大きなって、もう。と飲み込めてない先輩を座りつつ、身長差を減らした。腹部の棘が気になる。
「ちょっと、一旦ベルトを外すことはできます?」
「んだよ。カッコイイじゃねぇか」
「相手によっては凶器なんです。蟇郡先輩ならともかく、普通だったら衝撃で死にますよ? 腹に穴が開く」
「おい。どうして今、蟇郡が出たんだ。え?」
「蟇郡先輩だと、生身でも鉄の腹巻き巻いて無傷で済みそうだから」
「あり得るな」
 キッと吊り上がった目が、ふにゃりと下がる。呆れたような目にあった。同意もすぐする。「じゃ、外しますね」と取り掛かろうとしたけど、外す場所がわからない。悩んでいると、先輩が自ら外した。カチャっと音が鳴って、棘のベルトが落ちる。先輩の腹部と膝は無防備だ。その上に跨る。先輩が不思議そうに私の膝を見たあと、口を開いた。
「座る必要があるか? これ」
「こっちの方が便利だからです」
 色々と。と伝えて、先輩の身体を触ってみる。全身をほぼ撫でていいって、どういう神経なんだろう。まったく、と思いながら先輩の耳を撫でてみた。私のものと変わらない。人体構造は一緒だ。先輩は視線を逸らして、黙ってされるがままになっている。首筋を撫でてみるが、特になし。ゴクリと喉仏が微かに動くだけだ。胸や頬、唇なども触ってみる。肩や二の腕、指や手の平も触ってみた。それでも、一向に手を出して来ない。胸から上が終わりとなると、あとは下半身と腹部付近である。先輩に尋ねた。
「下も触ります?」
「へっ、変なとこ触ったら、容赦しねぇぞ!!」
「はいはい」
 それ以外を撫でればいいんだろう。先輩の太腿の内側や付け根を撫でながら思った。


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