香水が出たんだってへー

 スマートフォンをタップして、気になるニュースをチェックする。ふと、千芳の目が留まる。新種の香水が気になるのらしい。日頃チェックするほど気になるものではないが、なぜかパッケージに目が留まった。詳細を調べる。どうやら、男性向けで使われるものらしい。女性を魅力的に魅せる香りも使われていることから、男女共同、ユニバースとしてでも使えそうだ。
 購入を考えていると、猿投山がその傍を通る。千芳の見るスマートフォンに示された画像を見た途端、顔を顰めた。
「買うのか?」
 その不機嫌そうな声に、千芳が振り向く。その形相を見て、少し考え込んだ。
「いや、迷ってる途中。パッケージが可愛いのと、香りが気になったのもあって」
「それ、メンズ向けだろ。誰かにあげるのか?」
「誰にあげろと。それとも、先輩が使うんですか?」
 わかりやすい嫉妬による誤解に呆れつつ、千芳が該当箇所を見せる。それを猿投山はジト目で見た。──香水の紹介文、使われる成分、その他諸々──。文章を呼んだ限りでは、なにもわからない。お手上げの状態で、破れかぶれに千芳へ聞いてみる。
「だったら、俺が似合うとでも?」
「さぁ。使ってみないとわからないし。そもそも、香りを試した方が早いという話ですし」
 とお茶を濁して、話を変えた。視線を下に落とす。
「まぁ、県外の境界を渡るという真似、今じゃ難しそうですが」
「じゃぁ、試せねぇじゃねぇか」
 最もな意見である。千芳はそれに反論せず、黙って話を見送った。別の話題に変える。
「吹雪、すごいですね」
「おう。今日が休みでよかったぜ」
 これじゃぁ店仕舞いだ、と閑古鳥を鳴かせる天気に対していった。


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