真夏日の熱中症(在学中)

「蟇郡先輩って、暑くないんですか」
 この猛暑にも関わらず、学内抜き打ちイベントで仁王立ちを決める先輩は、涼しい顔をしていように思える。実際は首の裏や米神から汗を掻いているけど、遠目からは掻いてないように思える。痩せ我慢か。こんな諸々を含めて気になって聞いてみたら、蟇郡先輩が「むん」と悩む顔をした。答えに窮しているな、これ。
「皐月様も仰ってただろう。『心頭滅却すれば火もまた涼し』と」
「それはそうとして、多少の限界があるんじゃ? なにせ、汗は止められないし」
「そういうが、この暑い中汗一つ掻いておられなかったぞ?」
「それは後ろで生徒会役員が大きな団扇を扇いでましたからね。熱中症対策も完璧なんですよ」
「あとは日陰だね。ちゃんとパラソルも後ろで用意していたし」
「あら犬くん、途中で会話に入るのぉ?」
「熱中症対策も完璧ですね」
「うむ。皐月様はいつも万全を期しておられる」
「まぁ、体調管理も求められるからねぇ。俺たちには」
「って、猿くんはどうしたの? 千芳が話し出すと、必ず口を出すじゃない?」
「あぁ、先輩なら」
 そう言い切ろうとすると、バァンと扉が開く。両開きだから、真ん中を押せば両方の扉が開く。向こうから、息を切らした先輩が入ってきた。
「クッソ、あっちぃ。んな暑い中、外でやろうとすンじゃねぇよ」
「なるほど。外で活動していた部活動の全員を屋内へ退避させて、体育館の整備及び一部校舎解放などの手続きをして、対策をしてきたんですね?」
「千芳もよくわかるわ。あの一言と様子で、そこまでわかんないでしょ」
「ん? お、おぉ! そうだな!!」
「そしてわかってないぞ。コイツ」
「あぁ、今年の熱中症患者のリストも作らないとな。そこから要員を見つけて対策を練る必要がある」
 といいながら、蟇郡先輩が悩み始めた。「熱中症の要因かぁ」「大方、猛暑日の中動いて水分補給を怠った馬鹿でしょ」乃音先輩の毒舌が強い。大抵、それが原因であることに変わりはないけど。
「なら、給水器を各部活動の活動場所に付けるか? 自販機をタダにして、アクエリとか置いてよ」
「だったら、部長が二つ星階級の部活に限られるね。階級の差を付けないと、学園のポリシーが崩れる」
「そうねぇ。文化部の方も、同様の処置をしておこうかしら」
「それがいいかと」
「残るは、申請だけだな」
「資料も作った方が?」
「流石に問題点と改善点と結果の要点を添えて設備と金額を申請すればいいだろ」
 そう犬牟田先輩が適当に返した。


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