和のメイド喫茶(卒暁後)

 通りがかったお店の制服が可愛いな、と思って。ちょうど人数に穴が空いたのらしくって、短期間の募集もやっていて。じゃぁ、ちょうどいいと思って応募をして受かったわけなんだけど。まさか、先輩たちがくるとは思わないじゃない。
「えっと、四名様で?」
「『お帰りなさいませ、ご主人様』は?」
「馬鹿ねぇ。そういうコンセプトの店じゃないでしょ」
「まぁ、風紀を乱すようなところではないか」
(ここで叫ばれたら困るの、こっちなんだけど)
 しかも他人の振りはできないし。蟇郡先輩と乃音先輩、犬牟田先輩の反応に戸惑う。猿投山先輩に至っては、固まったままだし。とりあえず空いてる席に案内して、メニューとお冷を渡す。とりあえず、使い方はこれで合ってたっけ? 先輩相手だから、少し気が緩んでしまう。
「ご注文がお決まりでしたら」
「それ、いつも着てんのか?」
 いや、先輩。接客中に人の手を掴まないで。いきなり手首を掴まれるものだから、仕事の手が止まってしまう。
「馬鹿ねぇ、猿くんったら。それがここでの制服なのよぉ?」
「いわば作業着だね。まっ、仕事中に着てるで合ってるんじゃないのかな」
「うむ、仕事と休日の切り替えは大事だからな!」
「えっと、仕事中ですので。そういった質問には答えられな」
「はっ? その手の輩が多いのか?」
 え、待って。どうして突然キレたの? ギリリと先輩が握る力を強める。おかげで、掴まれてる方の手首が痛い。「その」と言葉に出すと、グイッと引っ張られる。「仕事中です」というと、ギッと先輩の顔が歪んだ。
「辞めちまえよ」
 そうはいわれても。和服とメイド服に釣られた手前、中々辞められないのだ。返答に困る。先輩は相変わらず、機嫌を悪くしていた。


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