成長痛(在学時)

 風がビュウビュウと吹いている。とても強い。(そういえば、風の向きや速度でも変わったな)いくら生命戦維が気合で物理的なものを無視するとはいえ、参考にした方がいいだろう。敵はそうでない可能性もあるし、逆に利用する可能性もある。説明は、どうやってしようか? マニュアルのことを考えていると、高くなった背が見えた。いつのまに。昨夜まで、あんなに小さかったのに。
「おう、文月じゃねぇか」
「猿投山先輩。見ればわかることだと思いますが」
 ひとまず、聞いて方がいいだろう。
「もしかして、極制服を仕立て直しにしてます?」
「あぁ。起きたら急に伸びててよ。どうだ? 手前ぇを見下ろせるくらいになったぜ?」
「はいはい。数センチくらいだと思いますが」
「んだと? すぐにお前の旋毛も追い越してやらぁ!!」
「それ、いったいどういうことですかね」
 確かに、肩ぐらいまでの高さがいきなり同じ目線の高さになってるけど。それとチビの頃にやった髪型は似合わなくなったのか、髪を下ろしてた。
「早く良くなるといいですね」
「全然痛くねぇに決まってんだろうがぁ!!」
 そう先輩は喚くけど、どちらかといえば痩せ我慢に近かった。負け犬の遠吠えともいう。成長痛は激痛を伴う──大きく背丈が伸びるほど余計にだ。
 先輩の膝に視線を落とすと「見るんじゃねぇ!」とまた先輩が泣くのを堪えるかのように喚いた。


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