ポッキーときす

 パイを食べたい。あのサクサクとした食感を、味わいたい。けれどもパイがない。手元に、パイはないのだ。代わりに飴をガリガリ食べる。けど、あのパイのサクサクとした食感にはほど遠い。
「食うか?」
 ふと、コンビニから帰ってきた先輩がなにかを差し出してきた。袋である。コンビニのお菓子が入っているようだ。
「うん、ありがとう」
 受け取ろうとしたら、先輩がお菓子を取り出した。あ、GABA。他にもリベラがある。他のお菓子が出ることを他所に、リベラを手に取った。脂肪や糖の吸収を抑える方がいい。
「なんか、根を詰めているみたいだったからよ。良さそうの、買ってきておいたぜ」
「ありがとう。気分転換には、なったかも」
 一番はGABAを食べるのが一番だが。けどまぁ、次の機会でいいだろう。一口、二口。噛んで溶かすたびに頭の疲れが引いてくる。一時しのぎかもしれないが、ないよりはマシだ。チャックを閉じて、飴に手を伸ばす。封を開けようとしたら、先輩がポッキーを食べていた。
「ん」
 クッとココア生地の方を見せる。それを見せて、いったいどうしたいんだろうか? 疑問に思ってると、ポリポリとポッキーを食べ進めていく。そして食べ終えると、もう一本を食べ始めた。今度はクッキー生地の方からである。
「ん」
 苺チョコレートの方を見せられる。どうやら、食べてほしいのらしい。(先輩も、好きだなぁ)なんて思いながら、先端に食み出たチョコレートを食べた。
 ポキリ、と音がする。甘酸っぱい苺の味がした。だけど先輩はまだ納得が行かない。不満そうな目で私を見ている。
(わがままだなぁ)
 なんて思いながら、もう一口食べる。口に含めば、甘酸っぱい苺がした。微かに甘いチョコレートも味わえる。舌で溶かす暇もなく噛み進めれば、先輩が満足そうに目を細めた。ポリポリと食べ進める。先輩も、咥えた方がふやけてきたのか──ポキッと一口を食べた。でも離さない。ポッキーを咥えただけだ。
(本当、好きだなぁ)
 期待する先輩の目を受けながら、もう一口食べる。(もう少しで触れそうだな)と思ったところで、先輩がポリっと最後の一口を食べた。ガシッと頭を掴まれて、口の中のを全部掻っ攫われる。おかげでクッキーのサクサク感も残らない。水を飲んだ後みたいなスッキリ感に複雑な思いを抱いていると、先輩がペロリと舌なめずりをした。
「もう一勝負、行くか?」
「勝負じゃないじゃん」
「んじゃ、もう一本」
「やだ。胸焼けする」
「キスでか?」
 そうキョトンとして尋ねる。そんな先輩に「バカ」としか返せなかった。


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