あめ

 飴をコロコロ舐めていたら、突然先輩がやってきて、中身を奪われた。チュパッと音がして、先輩の舌に飴が包まれる。小さい。お互いの唾で溶けたのだろう。それを口に入れると、先輩は腰を上げた。
「新しいの、まだあるのに」
「そーかよ」
 と雑にいって飴を転がす。元々、私のなのに。新しいのを広げる。
「フルーツ味、美味しいですね」
「ん? あぁ、そうだな? 俺ぁ、ミルク味でも別にいいけどよ」
「ミルク味。中からドロリと溢れる?」
「まぁ、そんな感じだ」
 そういって、先輩がまた顎を掬う。今度は唇を指で撫でてきた。さっきまで、キス、したばっかりなのに。
「別に、青苦い味になってもいいけどよ」
「あおにがい?」
「灰汁抜きのされてねぇコンニャクみてぇな感じだ」
(意味わかんない)
 青物の野菜、みたいな苦味の話じゃないんだろうか。そう思ってたら、軽いキスをしてくる。ちゅっちゅっとしてから、舌を入れようとする。
「ないよ」
 少し肩を押して、距離を作る。
「飴」
 そう伝えると、伏せた瞼がパチッと開いた。
「別に、構わねぇよ」
「え」
「キスしたいから、してるだけだしな」
「それって」
 飴、関係ないじゃん。それなら私の飴を返してほしい。そう思ったら、薄まったオレンジの味が広がった。嘘をついた私の舌に、ピーチの味も広がる。オレンジとピーチが混ざって、軽いミックスジュースの状態になった。でも、とても薄い。お互いの唾で、ビチャビチャに希釈されていた。
「ん、あ」
 じゅるっと舌の先端を吸われる。なんか、こういうときばっかりに限って、先輩がやけに獣っぽく見える。(獣の瞳孔)前にやったゲームの、エネミーキャラのエフェクトを思い出した。そんなゲーム通りに対策できるわけじゃないけど。物足りない先輩が、また近付く。貪欲に吸われてる内に腰が砕けて、床に倒れてた。
 押し倒される。テーブルに顔を向ける。飴の残量を見ようとしたら、先輩が覆い被さってきた。


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