寝てる

 うとうとと眠り続けていると、違和感が起こる。胸の辺りが擽ったい。けれども起きたくはない。手探りで猿投山は探す。千芳は相変わらず腕の中にいるし、寝返りを打っても問題はない。掌には髪。恐らく、自分の方を見て寝ているのだろう。ペタペタと肩を触り、腕の感触を見る。空気から肘に当たった。肘は折れている。曲がっている。その角度に添えば、千芳の手に突き当たった。
(あっ、こういうことか)
 スン、と妙に納得がいく。跳ねるボタンと勘違いした千芳の指を掴み、動きを止めさせる。ボタンのなくなった触感に、眠る千芳が首を傾げた。夢の中では、急にボタンが消えたことだろう。壁となったことに驚いているはずだ。
 壁も触る趣味はないのか、ボタンを押す手が止まる。代わりに自分の胸板に顔を突っ込んで、鼻をスンスンとしてきた。
(あー)
 寝ても猿投山は唸る。動物みたいに愛着表現をする千芳の頭を、軽く撫でる。それから潰さないよう力を入れて抱き締めた。
 スッと猿投山の腕の中で眠る。その落ち着いた様子を見てから、猿投山も夢の続きに戻った。


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