寒い日(卒暁後)

 牛乳を三分の一入れて、ココアが蕩け切るまで熱して混ぜる。そのあと残りを入れて温め直したら、いつもと違うココアができた。
(蕩ける)
 ココアのだまだまとした感覚はなく、スーッと舌に蕩けて消える。まるで飲むチョコレートだ。ミルクで薄めたから、ミルク七〇パーセントに近い味わいだけど。
(ツイートに嘘偽りなし)
 本当に、ホテルや帝都レストランで飲むような味だ。帝都? いったいどこのことだかわかんない。ぼんやりと頭に浮かんだ『帝都』について考えてたら、先輩が台所にきた。
「寒くね?」
「寒い」
 そもそもノースリーブにどてらっていう格好が舐めていると思う。そんなんじゃ寒いと思う。「中にもう一枚着たら?」と聞くと「体温が移って温かいぜ?」という。
「でも、もう一枚着た方が温かいじゃん」
 そういうと、先輩がキョトンとした。もしかして、暖房があるからマシだとでも思ったのだろうか。そんなわけない。仮にそうだとしても、筋肉の防寒性にも限界がある。ブルリと身震いをする。先輩の胸を見れば、鳥肌が少し立っていた。
「やっぱり着た方がいいじゃん」
「つめたっ!」
「このままじゃ風邪引いちゃうよ?」
「お前の手が冷たい方が問題だっつーの」
 ったく、と先輩が弱音を吐く。弱音? 少なくとも冷たさで先輩がブルブルと震えたのは確かだ。「ノースリーブとどてら一枚だから寒いんだよ」といえば、ジトリとした目で先輩が見てきたのであった。
 ココアを一口飲む。
「なにか飲むの?」
「白湯」
 温かいものを飲むのかな、と思ったらまさかのお湯である。「ポカリやアクエリもいいけどよ、手軽に飲むならこれだな」と先輩がお湯を一気に飲み干す。熱くないのかな。喉が火傷しそうだけど、寒さの前では平気なんだろうか。
「炬燵、入る?」
「もう着けたぜ」
「ストーブは?」
「入れた」
「そう」
 つまり温まる準備はもうできている。飲みさしのカップ片手にリビングに戻る。もぞもぞと炬燵に入って窓を眺めれば、雪が積もっていた。
「サッシの、隙間塞いだ方がいいかな」
「もう少し温かくなってからにしようぜ。さびぃしよ」
 うぅ、さびぃ。と先輩がもう一度いって炬燵に入る。とりあえず、明日が最低気温氷点下を下回ることを知っているんだろうか? そんなことを思いながら、とりあえずテレビでも付けた。


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