胸焼けがするほど甘ったるいものとこんにゃくチップス

 パリパリとコンニャクを食べる。やはりコンビニのこんにゃくチップスは美味しい。いちごミルクを飲めばさらに相性は良くなる。甘味を補給し、塩分とパリッとした揚げ物を味わう。けど中身はコンニャクだ。なので実質カロリー消費で油分の摂取カロリーは軽減される。
「やけに買い込んだなぁ」
 横を通りがかった先輩がいう。「慣れたら一枚以上でも大丈夫なんでしょ?」と尋ねれば「まぁ」と先輩が答える。その視線が戻る先を見れば、私が買いこんだこんにゃくチップスだ。
「間食に、ちょうどよくて」
 買い込んだ理由を伝えると「そうか」と先輩が返してくる。横に座った。胡坐を掻いている。それで私の食べてるチップスに手を伸ばした。
「美味ぇな」
(あ、認めた)
 ボソッと呟いた先輩の横顔を見る。それから、私のいちごミルクに手を伸ばそうとした。
「ダメ」
 これは私が500ml全部飲む気で買ったのだ。封を開けなくても香る甘い甘いいちごミルク。この誘惑に耐えながら頑張った結果、この一時を味わっているのだ。先輩に今月の数字を見せる。先輩は少し首を傾げた。
「調子がいいみたい、だな?」
「うん。今月分は中々」
「日々の精進のおかげだな」
 そういって先輩がまたもう一口を食べた。正直、一袋当たりの量は心もとない。ペラッと裏を捲る。あ、『コンニャク粉』と書いてある。
(粉末から作る際に、味付けをしているのかな)
 そうすれば、芋から作るよりも勝手が良くなる。それに揚げて味を付けたりするのだ。コンニャク本来の味は然程重要ではないのだろう。
(なんか、すっかり先輩に染まっちゃった)
 その目の前で、先輩がまた一つ。
「私の分」
「まだ残ってるぜ。ほらよ」
 口を開けろっていってるみたいに、先輩が抓んだチップスを見せる。あ、と口を開けてチップスを抓む。二枚一気に食べようとしたら、先輩が一枚を引き抜いた。
「ム」
 抓み切れなかった一枚だ。ガッシリと先輩の指に挟まって、口に入る。手元の袋を覗けば、なにもない。叩けばペッタンコだ。中身はもうない。もう一袋、開ける。
「食べすぎ注意だぜ」
「太らないよ?」
「腸閉塞になっちまうぞ」
『腸閉塞』ちょっと思い出したら、その怖さに口を隠す。あ、忘れてた。適切な量。だからあんなに「一日一枚」っていったんだった。
(それを、美味しさのあまり)
 あまり、他人のことをいえなくなってきた。グヌヌと唸ってたら先輩が横から「グルコマンナン四から五グラムくらいに抑えておけば行けるぜ」と助け船を出してきた。けど、そんな専門用語をいわれても、だって、成分表に「グル」の一文字も書いてないし。あっても飽和脂肪酸だ。
「一丁分で凝縮してるから、セーフ?」
「さぁな」
 スッと先輩が前髪を上げて熱を測ってくる。相変わらず、先輩の手は大きい。
「悪化すりゃぁ熱が出るからなぁ。それから脱水症状にショック症状だ」
「うっ。その手前では?」
「吐き気に嘔吐、腹痛に腹の張り」
 具合の悪いところはねぇか? と先輩が尋ねてくる。それに「うぅん」と答える。今のところ、胸焼けが少しするだけだ。甘ったるいものと脂っこいものの組み合わせはダメなのだ。
「特に、なにも」
「そうか」
 トンと先輩が掌越しに額をくっ付いてくる。上目遣いだ。私の顔を覗き込んでいる。
「水、飲むか?」
 そのお見通しな提案に、私は「うん」と頷くしかなかった。


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