生徒会室にて砂糖を喰らう

「ん」
 粉砂糖で作ったお菓子は美味しい。梅の花を模したお菓子を口に入れる。放り込めば、粉砂糖の甘さと一緒に、口の中に蕩けて消えた。
「正月には、まだ早いんじゃねぇのか」
 同じ落雁のお菓子を眺めていた先輩がいう。「そりゃそうですけど」といいながら、落雁をもう一つ食べる。
「美味しいじゃないですか」
「食べすぎると、胸が凭れるぞ」
「やったんですか?」
 そう尋ねれば、プイッと顔を逸らされる。返事に困る顔だな。そう思いながら、箱の半分を食べた。小さい割に砂糖の量はある。試しに上に乗ってる樫の葉を食べたら、食べれた。しかも甘さはない。落雁を固めた材料の味がするだけである。
(甘くない)
「近いのでいやぁ、クリスマスだろうに」
「クリスマスはクリスマス商品があるでしょう? 当日に」
「あるけどなぁ」
 といいつつ、先輩もお菓子の封を解く。そっちには、まだあるんだろうな。物足りなくて、ジッと見てしまう。
「食い意地で買ったか?」
「確かに。ケーキと粉砂糖だと、腹持ちは後者でしょうし」
「ケーキだろ」
「甘さですよ。ケーキ、スポンジまで甘くないもん。生クリームを際立たせたり」
「甘いだろ。スポンジにも砂糖、入ってるぜ」
 ガリッと落雁を噛み砕いた先輩が「あー」と呻く。
「あめぇ、な」
「普通、舌で蕩けさせるものですよ。噛むんじゃなくて」
 ラムネじゃないんだから。そういいながら、下のシートを取った。一つの空間に二段重ねだ。落雁の模様が落雁の底で削れないように、シートで覆っている。次は正月によく見る蒲の花か葉が見えた。
「お茶、ほしいですね。緑茶」
「向こうにいきゃぁ、飲めるぜ。自分で煎れりゃぁな」
「茶道部にお願いしようかな。お抹茶、立てれるし」
「それこそ、ここで食うもんじゃねぇだろうが。っつか、どうすんだよ。この量」
 ようやく先輩が本題に入った。
「さぁ。欲しかったの一律買っちゃったので」
「はぁ、無駄遣いねぇ」
「たまの贅沢ともいってください。お、コーンポタージュ色」
 けど口に含むと、粉砂糖。甘い味がする。お、溶けにくい。
「それぞれの店の食べ比べを、したかったんですよ」
「ふぅん。で、この量か」
「そう」
 先輩が鈍いスピードで、ようやく一段を食べ終える。もしかして。
「甘いの、苦手だったりします?」
「コンニャクならこの量、余裕だぜ。食いながらコンニャクの型取りを考えてんだよ」
「崩れそう」
「ねぇよ。ちゃんと固めりゃ、形は崩れねぇぜ」
(いや、コンニャクの話じゃなくて)
 ハッと慌てて話を戻す。またコンニャク問答に入るところだった。
「段々、緑茶がほしくなってきましたね」
「自分で煎れろよ」
「はいはい。で、どれがお好みで? 茶葉は?」
「とびっきり苦いもん」
 見れば、とても青白い顔をしている。先輩も落雁の甘さに限界が来ているのだろうか? 確かに、飲み物なしで落雁制覇に挑むのはキツイ。いくら美味しくたって、元々は苦いお茶のお供なのだ。
 かくいう私も、一つ抓んで緑茶を入れる気にはならない。「そうですか」と言い残して、茶葉の缶詰を保存したところに向かう。チラリとソファの方を見れば、ポリポリと先輩は落雁を食べていたのであった。


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