フライドポテトと相談(卒暁後)

 この時期になると、新しいゲームもどんどん出る。ついでに日本では上映されないレイティングの高い映画のBDも手に入れた。さて、これを皆で楽しむには、どこでやるのがいいのか。
「金のかかるところは御免だな。次の日に仕事があると、遠出もできん」
「じゃぁ、どこかを借りるってのは無しね。当たり前だけど。誰かの部屋に集まったりする?」
「それが一番いいんじゃねぇのか?」
「幸いなことに、お互い距離が近いですし」
 乃音先輩は抹茶のティラミスで、蟇郡先輩はハンバーグ、猿投山先輩はフライドポテトで私はスープだ。なぜかファミレスのポタージュスープは、異様に美味しい。
「じゃぁ誰かの部屋に集まるか?」
「俺のところは無理だぞ。母が夜勤明けだから無理させるわけにはいかん」
「あぁ、ガマくんところはお母さんと一緒に暮らしてるんだっけ? じゃぁ無理だわ」
「結構騒ぐからなぁ。ついでに食ったあとの片付けもあるし」
「後片づけは基本ですから」
「だとしたら、台所も自由に使えなきゃダメってことね。ってことでアタシんとこも無理よ。そもそもアンタらを上がらせる気はないわ」
「ちぇっ」
「まぁ、淑女の部屋に男がみだりに入ることはできん」
「私は?」
「アンタは別。千芳は女の子だから、入ってもいいわよ」
「やった!」
「じゃぁよ。男・女が入れる場所でないと駄目じゃねぇか? 俺んとこはどうよ」
「猿くんのところぉ? 嫌よ。狭いし汚さそう」
「あぁ!?」
「そもそも。猿投山は今どこ住みだ?」
「実家」
「遠っ!?」
「神奈川県周辺に集まってる身としては、キツイですね」
「おう。今日もバイクでビュンと飛ばして来たぜ!」
「話が噛み合ってないわよ」
「それで猿投山が来れた代わりに犬牟田は来れん、と」
「んだよ。なんか文句でもあんのか? え?」
「先輩、テーブルに足乗せないでくださいね」
「ったく、これだから野猿は行儀が悪いのよねぇ」
「あぁん?」
「先輩、喧嘩売らないでください」
 こら、と先輩の足を叩く。そうしたらジッとこちらを睨んだだけで、恐る恐る足をソファに下ろした。よかった、こんな人前でテーブルに足乗せられたらどうしようかと思った。
「確か、外せない用事があるんでしたっけ?」
「うむ。なのでこっちの決めたことに従うから勝手に決めてくれ、ともいわれたな」
「要するに決定権を此方に渡したのよ、犬くんは」
「へぇ。なら、いない人のこといっても仕方ないですし。こっちでやりますか? 蟇郡先輩の入る分のスペースは確保してるし」
「絶対ぇやだ」
「なんでですか」
「わかってあげなさいよ。やきもちよ、やきもち」
「ふむ? まぁ、蛇崩と似たような理由で俺も反対だな。紳士が淑女の部屋に無闇矢鱈に入ることはできん」
「へぇ」
「つまり、犬牟田さんの部屋しかねぇってことだな。同居人に迷惑もかけず、防音もあって、でけぇ台所も自由に使える」
「確かに。そういえば情報戦略部室も、似たような理由で防音設備整ってなかったっけ?」
「あぁ、ノイズがどうとか外の音が煩いとかいってたアレか」
「作業効率がどのように上がるかは、人によって違いますし。単純に隣の生活音を聞くのが嫌なのでは?」
「つまり、少し思うところがあるってことか?」
「そうとは、違うけど。マンションとかアパート暮らしだと、隣の音が聞こえるのはしょうがないし」
「多少は思うところがあるのね」
「学生マンションも大変だな」
「家賃の安さには裏がある! 悲しいですね」
「そう元気よくいうことじゃねぇだろ。で、話を戻すと」
「うむ」
「猿くんが仕切ると、なんか嫌な予感がするわね」
「うるせぇぞ、蛇崩。今度集まる場所も、犬牟田さん家で決まりっつーことだよな?」
 その結論に、シンとなる。うん、確かに。今話した感じだとそうならざるも得ないけど。
「でも、いいのかなぁ」
「もう三回連続で犬牟田の部屋を使っているぞ? 本人に申し訳なく思わんのか? 猿投山」
「は? いやいや、普通に考えても消去法で犬牟田んとこしかねぇだろ」
「まぁ、ガマくんの都合も考えるとそれねぇ。とりあえず本人には伝えておいたわ」
「あ、きた。『マジか』っていわれてますよ。先輩」
「文月まで俺にいうんじゃねぇよ」
「だって仕切ったの、先輩ですし」
「それがリーダーの務めだぞ。猿投山」
「蟇郡までなにをいってんだ。へいへい、俺が悪ぅございやした! これで満足かっ!」
「別にいってないですけど。拗ねないで下さいよ」
 はい、といってフライドポテトを先輩の口に入れれば、素直に先輩が食べた。ムシャムシャと食べるので、面白半分にもう一つ運ぶ。するとパシャっと写真を撮られて、そのあとからブーブーとラインの着信が鳴った。とりあえず見る。
『リア充爆発しろ』
 との犬牟田先輩からの怒りとも取れるメッセージがきた。とりあえず先輩にはリーダーとしての務めを果たしてもらおう。フライドポテトをもう一つ抓み、先輩の口に入れる。もぐもぐと食べる瞬間を写真に収めた。
『釣り』
『馬鹿?』
『馬鹿なのか?』
「あとでどうなっても知らんぞ」
 腕組をして乃音先輩の画面を覗いてたらしい蟇郡先輩が、直でいってきた。


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