渦とベッドで一晩中した朝のこと

 腰の痛みで目が覚める。パチッと目を開けたら、いつもと見慣れた部屋。寝返りを打とうとして、少し無理をしてしまったのらしい。痛みに気を付けて寝返りを打つと、渦の顔と鉢合わせた。寝てる。口は微かにだけど開いていて、寝てるにも関わらず精悍な顔をしている。少し体を動かして、その軽く開いた口に口づける。やっぱり、見た目より唇が柔らかい。そう思いながら寝返りを打つ。散々、気を失ってでも一晩中相手にされたのだ。シャワーを浴びたい。
「わ」
 グンと腕を引っ張られたので、出ることは叶わなかったが。
 布団に戻される。もぞもぞと渦に向き合う形で寝直すと、パチッと目を覚ました渦とかち合った。薄目だけど、どこか文句をいいたそうだ。
「なぁに」
 と気だるげに聞けば、渦が眉間を顰めて近付いてきた。
 向き合う形で抱き締められる。背中や腰に回された腕が痛い。ギュッと押し潰されてしまいそうだ。
「くるしい」
「ん」
 わりぃ、と返されて力が緩まる。少し楽になった。腕の間で、渦の肩に頭を擦り付ける。いつもある身長差は、寝ているおかげでそんなに感じない。爪先に当たる渦の脛を、なぞる。骨の出てる部分を、親指と人差し指の間で挟んで撫でた。
「くすぐってぇよ」
 寝起きの低い声で小さくそういうものだから、柔らかい付け根の方で撫でる。渦は少し身動ぎしたものの、なにもいってこない。そのまま、渦の脛を撫でて遊んだ。腰を軽く引き寄せられる。私の頭に、渦が軽く頬を摺り寄せてきた。「なぁに」とまた聞けば、渦がまた体を引き寄せてくる。
 ギュッと抱き締められる。布団の中でこうして暖を取り合うことは楽しいけど、やっぱりシャワーを浴びたい。一時の幸せに水を差すように肩を押せば、ギュッと渦がまた抱き返してきた。
 シャワー、全然浴びれない。「妊娠しちゃうかも」と呟けば「しちまえよ」と渦は返した。
(マジか)
 疑心暗鬼が胸に生まれる。本当に責任を取るつもりなんだろうか? それにできたあとの諸々の大変さもわかってるつもりなんだろうか。そんな不安に、目を瞑る。二度寝を決めた。
 渦は相変わらず、私の頭を撫でる。頭頂部に渦の鼻がコツンと当たる。そのまま額まで真っ直ぐ髪を掻き分けて、私のオデコにキスをした。そのくすぐったさに、身を捩る。そうしたら、渦の抱き締める力が強くなった。そのあと渦がボソリと呟く。
「二回戦、するか」
「やだ」
 散々一晩中付き合わせたくせに、なにをいうんだろう。地獄耳で拾ったのをサーブで打ち返したら、渦が拗ねたように体を丸めた。ギュッと、渦の足に体を挟まれる。
(ますます身動きが取れなくなっちゃうじゃない)
 そう不満を垂らしながらも、渦の体にギュッと抱き着いてやり返してやった。あーあ、本当に男と女って不便。そう不満を口にしようとしたら、渦の指が私の首筋から背筋に向かって、這った。
(あーあ、もう)
 男心ってわかんない。
 そう思いながら、渦の好きにさせた。私は眠る。それだけである。頑固な態度に、いつかわかってくれるといいな、と思いながらくすぐったさに耐えて目を閉じた。
 渦の指が私の髪を遊ぶ。
(本当、男の子みたい)
 と思いながらも、私も渦の体を触っては遊んでいた。


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