just b* friends7 | ナノ




7.

お前が優しいことなんて、ずっと昔から知っていた。それでも私はお前を見くびっていたんだろうか。何も気にかけないままに、お前を見失っていたんだろうか。
違うんだよ文次郎。私はそんなのが欲しかったんじゃない。こんな風にお前の足手まといになりたかったんじゃない。毎日が少しずつ色褪せて、私もお前も大人になって、変わらないものなど無いんだとお前だって分かっていた筈だ。このままではいられないことも、この先に進むにはどうすればいいのかも、どの選択が最善なのかということも全て、賢いお前には分かっていたんだろう?
全て分かった上で、そこに蓋をしたんだろう?

留三郎との電話を半ば無理やり終わらせた後、私は朦朧とする意識の中で風呂に浅く湯をはった。蛇口が水面をたたく暴力的な音を聞きながら体の隅々まで丁寧に洗い、熱いシャワーで髪をすすぐ。渦を巻いて流れていく泡を見つめている間も、留三郎の言葉が耳の奥から消えなかった。目をつむったらそれこそ色々蘇って来そうで怖くなった。湯気で曇った鏡を人差し指でなぞってみたら、指の腹が冷たく痛んだ。
分からないふりをしていたのは私も同じだった。いつかこんな日が来ることだって、本当はどこかで気付いていた。目を逸らして、たくさんの言い訳を作って、それでも文次郎を離さなかったのは私だ。あいつが自分から私を遠ざけるなんて出来るわけがないのに。そんな選択肢は、端からあいつには存在しないのに。

浴槽の半分までたまった湯に体を沈めてから、私はようやくほんの少しだけ泣いた。



最も辛い選択がベスト


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