just b* friends6 | ナノ




6.

そうして一年が経った頃、相変わらず文次郎は休日だというのに出掛けていて、私ひとりが家に取り残されていた日曜日。
私たちの幼なじみの一人であり、部署は違うが文次郎の同僚でもある留三郎から唐突に電話がかかってきた。正確には文次郎のプライベート用の携帯電話にかかってきたのだが、あいつがそれを寝室に放っていったので私が代わりに出た。
最初こそ留三郎は私の声に驚いていたようだったが、理由を話すと仕方ないなと呆れて笑い、そうして私に元気か、と尋ねた。考えてみれば留三郎とは卒業以来会っていなかった。私は急に懐かしさが込み上げてきて、ここ一年の話をとりとめもなく喋った。文次郎の仕事がとても大変そうなこと、最近は滅多に二人でいられないこと、今日も本当は一緒に映画を見に行く予定だったこと。
いっそ別れてしまった方が経済的かな、と冗談混じりに呟いたら、留三郎はそれはやめとけ、と突然声音を低めた。
『あいつ、海外出張研修の誘いが来てたの断っただろうが。それだけお前のこと大切なんだよ』
『…は?』
『それこそエリートコースを思いっきり棒に振ったんだ、その辺もう少し汲んでやっても…』
『…………………』
『仙蔵?』
留三郎の言葉を聞きながら、全身の力が抜けるのが分かった。ずっと一緒だと言った文次郎の笑顔が頭をよぎり、私は握った手のひらに強く爪を立てた。



切った指から滴るしずく


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