just b* friends5 | ナノ




5.

一緒に食事を取らなくなったのはいつからだろう。向いているとは思っていたが、どんどん仕事を覚えていくにつれ、あいつは毎日忙しく走り回るようになった。朝は私が起きるよりずっと早くに家を出て、難しい交渉や会議のために深夜まで会社に籠もり、帰って来ても終電、前触れ無しに三日間泊まり込みというようなことも珍しくなくなった。学生時代から使っていた黒の携帯電話ではなく会社から支給された旧式のそれをいじる文次郎は、元からある隈が更にひどくなっていったけれど、同時にとても幸せそうだった。蓄えて来た能力を最大限に生かして、しかもその力が周りに認められて、あいつは確かに自分の居場所を築き上げた。だけどそこは、大学に残って研究を続ける道を選択した私には、どうしたって手の届かないところだ。
直接会うことが出来なくても、まめに連絡をくれていた頃はまだ良かった。些細なことでも文次郎と繋がっている証拠があるなら、私はそれだけでちゃんと立っていられたから。けれど次第にメールの数は減っていき、電話に至ってはほとんどかかってこなくなった。顔も見れない、声も聞けない、一緒に住んでいるのにすれ違うことさえ無い日が何日も続いた。
文句なんて言える筈もない。あいつは今まで私のせいで無理ばかりしてきたのだから、あんなに生き生きとした姿を見たら引き止められるわけがない。あいつの世界がいくら私から遠くても、それは受け入れなければいけないことだった。私のわがままであいつを損なわせるようなことは、決して許されない。



愛してるのに、離れがたいのに


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