just b* friends4 | ナノ




4.

大学を卒業して、私たちは一緒に暮らし始めた。駅から徒歩で二十分もかかる安普請のアパートでも、そこが私と文次郎の城だった。水色のソファを二人で探し、居間に置くテレビを二人で選んだ。営業の仕事に就いた文次郎のために、大学院へ進んだ私が毎日夕食を用意した。その代わり、休日は文次郎が風呂を洗った。小さな約束とルールの上に成り立つ私たちの生活。
朝はまずおはようと言ってキスをしましょう。行ってきますとお帰りなさいも忘れずに。夜はおやすみの前に今日あったことを話してください。
「ままごとみたいだ」と茶化した私に、「でも幸せだろ」と文次郎は笑った。あいつに似合わないとろけそうな顔が恥ずかしくて、私は必死にうつむいた。砂糖をぬるま湯に溶かしたみたい、そう小平太が呆れたのも無理はない。
リングは私の二十歳の誕生日に文次郎と買いに行った。文次郎は耳まで真っ赤になりながら「一生俺の側にいてくれ」と私の薬指にそれをはめた。あいつの肩越しに橙色の観覧車とイルミネーションが眩しくて、ぼやけた視界に拡散した光が滲んだ。口を開く前に、私の応えは真っ黒なダウンコートへと吸い込まれていった。
おそらくあれが私の人生最良の日だったんだろう。もしも願いが叶うならば、時を遡って、もう一度あの日のあいつに会いに行くのに。



あの日の君に会いに行くよ


next



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -